本研究の目的は路面すべり摩擦係数を指標とした凍結防止剤事前散布評価ソフトウェアの開発にある。平成29年度および平成30年度の研究により、凍結防止剤事前散布評価ソフトウェアを構築し、試験道路において検証を進めてきた。また、このソフトウェアの実用性を向上させるために車載式路面水膜厚計測装置を開発した。令和元年度の研究では、本研究で開発したソフトウェアと車載式路面水膜厚計測装置を精度向上と妥当性検証を試験道路および自動車専用道路において実施した。 ソフトウェアの精度向上に関して、路面凍結は路面上の水分量が重要であり、その水分量は通過車両による飛散の影響を受ける。ソフトウェアはこの影響を十分に考慮できていなかった。そこで、試験道路において走行試験を実施し、飛散量を水膜厚と走行速度を用いて定量的に評価した。また、自動車専用道路での走行試験から実道路の飛散量を再現できることを確認した。 車載式路面水膜厚計測装置については、その妥当性を自動車専用道路での走行試験を通じて検証した。その結果、路面水膜厚の測定値は降雨量によって増減し、妥当な挙動を示した。ただし、路面水膜厚の真値との比較はできておらず、今後の課題となった。 本研究により、気象予測、交通条件、舗装種別を基にした路面凍結予測と、凍結が発生する場合には最適な凍結防止剤散布の量・時期の推定が可能になった。また、車載式路面水膜厚計測装置を開発したことにより、路線の路面水膜厚分布の評価ができ、これによりどこで路面凍結が発生するのか、やどこで重点的な散布を要するかなどを、事前に把握することが可能になった。 今後は、本課題で開発したソフトウェアと路面水膜厚計測装置を融合させ、走行しながら凍結発生の有無、必要な散布量を算出するようなシステムの構築を目指す。
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