研究課題/領域番号 |
17K01351
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
西村 竜一 国立研究開発法人情報通信研究機構, 耐災害ICT研究センター応用領域研究室, 主任研究員 (30323116)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自然災害 / 音響信号処理 / センサーアレイ / 環境モニタリング / インフラサウンド |
研究実績の概要 |
本研究課題は,スマートフォンのように MEMS 気圧センサを内蔵するとともに通信機能を有する小型デバイスを利用することで,機動的に超低周波音の観測を可能とする技術を開発することである.津波や火山活動の際に発生する超低周波音は,災害をもたらす自然活動を迅速かつ詳細に把握する上で重要な情報源となる.しかし,現在一般的に利用可能な装置は,施設として構成しなければならない程に大きいものや高価なものがほとんどあり,利用できる場面が限られる.この問題の軽減を目的として,小型デバイスを用いた超低周波音観測の可能性について,様々な観点から調査を行うとともに,問題点を解決する信号処理技術を開発する.
前年度までの研究により,スマートフォンに内蔵されるような MEMS 気圧センサでの観測は,およそ 0.006 Hz 以下ではほぼ真値になるが,それ以上の帯域では周波数とともにシステム雑音が増加することが判明した.そこで,前年度から継続的に実施している屋外での長期モニタリングにより蓄積したデータに対して分析を行った.超低周波数のなかでも比較的高い周波数帯域では,システム雑音や風雑音等の雑音成分が多く含まれ,前年度に検討した雑音除去の信号処理等が必要とされるが,音波遮断周波数であるおよそ 0.003 Hz 付近では,それらの雑音が少ない傾向が確認された.
また,このように極めて低い周波数帯域では波長が十分長く,大気の厚さが無視できない程に相対的に薄くなりラム波としての性質が現れる.この場合の音の伝搬は,一般的な可聴音と異なり,同一の信号が単純に異なる時間遅れで到来するとみなすことができない.そのため,音の到来方向や距離を推定する従来のアルゴリズムをそのまま適用することができない.そこで,Compressive Sensing の考え方を適用したアルゴリズムを考案し,IEEE の国際会議への投稿を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では,2018年度以降の計画として,フィールド測定による性能評価と処理アルゴリズムの改善,および,センサ数の増加による精度向上と方向・位置推定手法の開発を予定していた.2018年度は,単体でのフィールド測定を実施し,距離推定のアルゴリズム開発に着手し,さらに計算機シミュレーションによる一部性能の評価などを実施した.本研究課題の実施期間は、2020年度までを予定していることから,現時点での進捗状況としては概ね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
考案アルゴリズムの特許化を視野に入れ,考案したアルゴリズムに対してより多くの条件での性能検証や,アルゴリズム自体の精度向上に向けた改良を行う.また,フィールド測定に際しては,スマートフォンに限ることなく,機能を限定的とした MEMS センサと通信機能のみを有する小型装置等も活用し,実データへの適用の可能性について検討を行うこととする.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は,次年度開催の国際会議での発表に向けて準備を行った.結果として,当該年度における発表件数および旅費が抑制され,次年度の海外発表旅費として確保されることとなった.
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