本研究課題は,スマートフォンのように MEMS 気圧センサを内蔵するとともに通信機能を有する小型デバイスを利用することで,機動的に超低周波音の観測を可能とする技術を開発することである.津波や火山活動の際に発生する超低周波音は,災害をもたらす自然活動を迅速かつ詳細に把握する上で重要な情報源となる.しかし,現在一般的に利用可能な装置は,施設として構成しなければならない程に大きいものや高価なものがほとんどであり,利用できる場面が限られる.この問題の軽減を目的として,小型デバイスを用いた超低周波音観測の可能性について,様々な観点から調査を行うとともに,問題点を解決する信号処理技術を開発する. 今年度は,津波発生時に観測されるようなインフラサウンドの中でも特に周波数の低い 0.003 - 0.01 Hz の成分に着目し,有意な信号を検出する精度について,スマートフォン,複数 MEMS 気圧センサーを同時利用する観測装置,および水晶振動式の高精度微気圧計を比較した.各日ごとに信号の標準偏差を求め,レベルに基づく検出を想定すると 3σ が検出閾値となる.この値が小さいほうが高い検出性能を有することになるが,スマートフォンでは他の装置に比べて 2 - 3 Pa 程度劣ることが判明した.一方,他の比較装置間には大きな差はなく,この周波数帯域に対する信号検出においては,高精度微気圧計だけでなく MEMS センサーを用いた小型で機動性の高い観測装置も有効であることが確認された.
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