研究課題/領域番号 |
17K01353
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
田渕 圭章 富山大学, 研究推進機構 研究推進総合支援センター, 教授 (20322109)
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研究分担者 |
長谷川 英之 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (00344698)
星 信彦 神戸大学, 先端融合研究環, 教授 (10209223)
鈴木 信雄 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 教授 (60242476)
池亀 美華 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (70282986)
古澤 之裕 富山県立大学, 工学部, 講師 (80632306)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 超音波 / 遺伝子応答 |
研究実績の概要 |
超音波は,医療現場において診断や治療に必須の技術である.その中で,低出力パルス超音波 (LIPUS) は,骨折治療に有効利用されている.特記すべきことは,診断用超音波のレベルで明確に有害な作用が生じたという報告例は過去数十年間ないことである.即ち,超音波は,ヒトに対して非常に安全性が高い技術であると考えられる. マウス骨髄間質細胞ST2 (理研BRC) と超音波発生装置 (Sound Cell Incubator Drive SCI-D100, MU研究所) に接続した超音波照射器 (Sound Cell Incubator SCI-p1, MU研究所) を用いた.細胞にシャーレの下面からLIPUSを20分間1回照射したとき (超音波周波数1.0 MHz, DF: 20%,パルス繰り返し周波数: 1 kHz, 送信電圧: 1-5 V),ERK (extracellular signal-regulated kinase 1/2) のリン酸化レベルが有意に抑制された.この効果はLIPUSの出力に依存して大きくなった.また,細胞に1日1回20分間4日間連続してLIPUSを照射し,その24時間後に細胞数と骨芽細胞の分化の指標であるALP (alkaline phosphatase) 活性を測定した.LIPUS (送信電圧3 V) は細胞数には影響を与えなかったが,ALP活性を有意に抑制した.同条件下,LIPUS照射の6時間後,ALP遺伝子の発現レベルは抑制傾向を示し,OPG (osteoprotegerin; 骨芽細胞の分化の指標) の発現レベルは有意に抑制された.さらに,最初期遺伝子JUN (Jun proto-oncogene) の発現レベルがLIPUS照射により抑制されることが示された.このLIPUSの作用の普遍性とそのメカニズムを明らかにしたいと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は,マウス骨髄間質細胞に対して低出力パルス超音波 (LIPUS) の応答を検討した.LIPUSの幾つかの効果を明らかにすることができたので,研究は概ね良好に進捗したと判断した.
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今後の研究の推進方策 |
未分化骨芽細胞と多分化能を有する間葉系幹細胞を用いて,低出力パルス超音波 (LIPUS) の細胞分化や増殖に対する効果を再確認する.LIPUS照射細胞における細胞内のシグナル伝達系の変化を調べた後,ヒストンの修飾状態やそれに関連する標的遺伝子の発現を調べる.次に,骨の有用なモデルである金魚のウロコを用いて,LIPUSによる標的遺伝子の発現の確認を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的に予算を執行することが出来たので,研究費の使用が予定金額よりも少なかった.これにより,次年度の繰越金が発生した.次年度の研究を実施するために以下の使用を計画している.試薬類:590千円.培養器具類:300千円.抗体類:450千円.網羅的遺伝子発現解析試薬類:300千円.国内旅費:50千円.人件費・謝金:50千円.その他:50千円.
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