研究課題
本研究では、胎生期の化学物質の曝露が発生初期にもたらす影響と個体の行動に与える影響を研究した。胎生15日のVPA曝露、TSA曝露、LPS曝露で小脳褶曲の変化が観察された一方、CPF、GLY曝露では構造変化は観察されなかった。VPA曝露、TSA曝露動物ではプルキンエ細胞のプログラム神経死の抑制が観察され、小脳内のミクログリア数が少なくなっていた。LPS、CPF、GLY曝露ではプルキンエ細胞が過剰に減少し、ミクログリアの活性化が見られた。プルキンエ細胞の過剰生存にHDAC阻害作用が関与するが小脳褶曲の機序とは完全には一致しないことが示唆された。VPA曝露動物ではReelinの過剰発現とグルタミン酸の反応伝搬時間の縮小が見られた一方、予想されたBDNFの変化は見られなかった。出生直後の炎症性サイトカイン発現量は、LPS曝露動物ではIL-1b、iNOSとも上昇、VPAでは減少した。GLY曝露動物は生後5日でIL-1bの一過性増加、生後2週でiNOSの増加を示し、発達依存的な神経炎症が示唆された。化学物質曝露ラット小脳グリアを培養したところ、LPS、VPA、GLYのいずれでも対照動物に比べて細胞増殖の抑制が観察された。このうちLPSとGLY曝露動物では主にミクログリアが培養され、超音波顕微鏡によってミクログリアがアストロサイトを捕食する像が観察された。VPA曝露動物の行動はADHD型の傾向が強く、GLY曝露動物の行動は自閉症もしくは不安症の傾向が強く現れた。VPA曝露動物へのオキシトシンを経口投与によってプルキンエ細胞の過剰な生存が抑制された。GLY曝露動物への酪酸経口投与によりプルキンエ細胞死が抑制された。ミクログリア の増加は変化が見られず、ミクログリア が攻撃型のM1から保護型のM2に変化したのではないかと考察した。これらは発達神経障害からの回復設計の可能性を示唆している。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件)
Ultrasonics
巻: 99 ページ: 105966
10.1016/j.ultras.2019.105966.
J Neurochem.
巻: 150 ページ: 249-263
10.1111/jnc.14791.
Infant Ment Health J.
巻: 40 ページ: 204-216
10.1002/imhj.21766.
IEICE technical report
巻: 119 ページ: 27-30