本年度は正逆交配によって得られた産仔rTg4510マウスのタウ蓄積量の差が引き起こされる原因について、遺伝子発現を中心に解析した。雌性CaMKII-tTAマウス(遺伝的背景C57BL/6J)と雄性tetO-TauP301Lマウス(遺伝的背景FVB/NJ)を交配することでrTg4510(F1 C57BL/6J x FVB/NJ)を得た。また、雌性tetO-TauP301Lマウス(遺伝的背景FVB/NJ)と雄性CaMKII-tTAマウス(遺伝的背景C57BL/6J)を交配することでrTg4510(F1 FVB/NJ x C57BL/6J)を得た。外来遺伝子が導入された領域に存在する遺伝子、タウおよびリン酸化関連酵素遺伝子について遺伝子発現をqPCRで解析した。しかし、rTg4510(F1 C57BL/6J x FVB/NJ)とrTg4510(F1 FVB/NJ x C57BL/6J)とで有意な差を認める遺伝子は見つからなかった。そこで次に、野生型マウスについても正逆交配によって、WT(F1 C57BL/6J x FVB/NJ)とWT(F1 FVB/NJ x C57BL/6J)を得た。そして、網羅的遺伝子解析(RNA-seq)によって、両者の遺伝子発現を比較した。さらにqPCRによっていくつかの候補遺伝子の発現量を解析したところ、E3 ubiquitin-protein ligase midline-1の発現量に有意な差が認められた。このmidline-1の発現量はrTg4510(F1 C57BL/6J x FVB/NJ)とrTg4510(F1 FVB/NJ x C57BL/6J)でも認められた。これらの結果から、正逆交配によって得られた産仔rTg4510マウスのタウ蓄積量の差が引き起こされる一因として、midline-1の発現量の違いが示唆された。
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