研究課題/領域番号 |
17K01362
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
山子 剛 宮崎大学, 工学部, 准教授 (50452074)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / 生体力学 / 人工関節 / 骨量減少 / ストレスシールディング / シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は人工股関節置換術後の骨反応とステムの固定性における経時変化を患者個別に予測する技術の確立を図り,患者個々にデザインコンセプトの実現性を評価することである.人工股関節全置換術後,大腿骨は金属製ステムを設置したことによる力学環境の変化に起因して,様々な骨のリモデリングを生じる.中でも近位部での骨量減少はステムの弛みを引き起こすことから,長期生存のために解決が求められている.近年,術後の骨量減少を抑制するためにヤング率を傾斜化したり,ポーラス化した新しいコンセプトのステムも開発されている.しかし,骨の形状と質は患者ごとに大きく異なり,ステムの設置位置も様々であることから,患者よってはステムの機能が十分に発揮できない場合が想定される. 本年度は2種類のセメントレスステムを対象として,術後の骨反応予測解析を実施した.術後2年までのステム周囲の骨量変化をシミュレーション結果とDEXAによる骨密度評価とを比較した.臨床結果では,術後早期に大腿骨近位部の骨量が著しく減少する傾向が見られ,シミュレーションでも同様な傾向を示していたものの,その程度には大きな差が認められた.これは術後早期の生活様式が影響したと考えられる.すなわち,入院生活による骨への力学的刺激の減少が,急激な骨量を引き起こしていると考えられる.そのため,日常生活レベルを考慮した荷重条件を設定する必要性が明らかになった.また,ポーラス部形状のモデリング(厚さ)が骨量変化の予測に及ぼす影響を検討した.ポーラス部の厚さは荷重の伝達様式を変化させることから,シミュレーション結果に大きく影響すると考えられたものの,結果に大きな差は見られなかった.この結果は骨形状に依存する可能性があることから引き続き症例数を増やし解析を実施する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2種類(アナトミカル型:8症例,ウェッジテーパー型:6症例)のセメントレスステムを解析対象として,術後の骨反応予測解析を実施した.アナトミカル型ステムにおいて,術後2年までのステム周囲の骨量変化をシミュレーション結果とDEXAによる骨密度評価とを比較した.臨床結果では術後早期に大腿骨近位部の骨量減少が見られ,シミュレーションでも同様な傾向は見られたものの,その程度には大きな差が認められた.これは術後早期の生活様式が影響したと考えられることから,これまで一様に与えていた荷重条件を日常生活レベルを考慮して設定する必要性が明らかになった.また,ウェッジテーパー型ステムにおいて,ポーラス部形状のモデリング(厚さ)が骨量変化シミュレーションに及ぼす影響を検討した.ポーラス部の厚さは大腿骨の荷重の伝達様式を変化させることから,骨量変化予測に大きく影響すると考えられたものの,結果に大きな影響は見られなかった.これの結果は骨形状に依存する可能性があることから引き続き症例数を増やし解析を実施する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,2種類のステムの臨床データを用いて術後の骨量変化を予測するシミュレーション技術の確立に取り組む.特に,日常生活レベルを考慮した荷重パラメータを設定することによるリモデリング解析の精度向上を図りながら,種々のパラメータを決定する.さらに,荷重条件の変更に対応するために骨リモデリングの数理モデルを簡略化する.ステムコンセプトの実現性について,患者個別の固定性及び荷重伝達解析を行い,新たな指標の確立に取り組む予定である.生体外力学試験も同時に行い,ステム特性評価の妥当性を検証する.最終的には,ステムのデザイン及び術後評価に有用なツールとして提供する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間を延長したことに伴い,ソフトウエアのライセンス費を支払うことが必要になったことから使用額が生じている.
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