研究課題
危険脈、Alternans脈、は死期切迫を予告する恐ろしい脈で、トラウベが1872年にはじめて記載したのであるが、百年以上経過した今でも二拍子の病理はミステリーで、その理由は、現実にヒトのAlternansを記録して研究するのではなく、シャーレのなかで作り出した人工的な実験を扱うからである。心電図解析法やPC技術革新が注目されがちだが、生体現象観察に立ち戻るという信念で、沢山のAlternansの事例を収集した。危険脈が、ヒトのみならず他の心臓をもつ動物に普遍的にみられることを実証し、実際の生体データをまとめた。ヒト:悪性腫瘍により健康を損なった料亭経営者Ms. Kさんの脈の記録を2度頂戴し、最初は危険脈の記録はなかったが2年後に危険脈の頻発が記録されて、その後1年ほど後に他界した。同じく悪性腫瘍患者で米国Virginia州Aelington のMs. Nさんの脈も2周期脈がみられ、2年後に他界した。危険脈が死の予兆の脈と言われるようにトラウベの刮目が理解できた。無脊椎動物の心臓:ヤシガニ、藻屑ガニ、ノコギリガザミ、オニヤドカリ、フナムシ、オニヤンマ、ヒョウモンチョウ、など数多くの例で、死に向かう2周期脈発生が記録され、アーカイブ資料になった。数理シミュレーションで、2周期の発生がNaとKの関係およびNaとCaの関係という二次元平面で観測できた。高次元現象である心拍ゆらぎが、低次元で見えてくることが、生体データから得た条件設定により可視化されることが分かった。
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