研究課題/領域番号 |
17K01366
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
原口 亮 兵庫県立大学, 応用情報科学研究科, 准教授 (00393215)
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研究分担者 |
芳本 潤 地方独立行政法人静岡県立病院機構静岡県立こども病院(臨床研究室), 臨床研究室, 医長 (20795330)
松山 高明 昭和大学, 医学部, 教授 (40349113)
芦原 貴司 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (80396259)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生体シミュレーション / 不整脈 / WPW / 小児 / モデリング |
研究実績の概要 |
平成29年度は,WPW症候群における副伝導路における興奮伝播過程を再現するためのシミュレーション実験システムの開発を行った. 本研究計画の目標の1つは,WPW症候群において,成人と小児における心臓の形態的差異や電気生理的性質の差異が心電図デルタ波にどのように反映されるかをコンピュータシミュレーション実験により理論的に明らかにすることである.そこでまずはじめにスイスIT'IS Foundationより "Virtual Population" 形状データを4例(34歳男性,26歳女性,11歳女児,6歳男児)購入した上で,体表面領域・肋骨・胸骨・心臓などを抽出して体表面形状モデルを構築した.心臓形状モデルについては,Virtual Populationモデルでは解像度が不足していたため,US National Library of Medicine より Vritual Human Male/Female の使用許諾を得てデータを入手した上で,抽出ソフトウェア VoTracer2 を用いて形状モデルを構築した.副伝導路の形態的特徴については,研究分担者の松山らによりWPW症例の組織切片画像3次元再構築による検討を行ったところ,副伝導路であるKent束の幅は4mm程度であった. 次にシミュレーション実験システムの開発を行った.形状を単純化した心房筋と心室筋とがKent束で結合しているモデルを構築し,電気生理数理モデルとして知られる Courtemancheモデル,O'Hara-Rudy モデルを組み込んだ.予備実験としてKent束の幅を2.5mmから12.5mmまで変化させながら心房から心室への伝導が成立するかのシミュレーション実験を行った.1,000ms のシミュレーションに20並列で2時間を要した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成人と小児の各形状モデルを入手し,シミュレーション実験に用いるためのデータ変換が完了している.購入した形状モデルの心臓部分の解像度が低かったため,急遽別ソースから形状データを入手しデータ変換を行うことになったが,平成29年度中に作業は完了している. 電気生理数理モデルとしては,心房筋Courtemancheモデルと心室筋O'Hara-Rudyモデルを採用し,次年度以降の大規模計算に向けた高速化チューニングがある程度完了している.Kent束の電気生理数理モデルについては引き続き検討が必要であるが,ひとまずCourtemancheモデルで代用している. このように,研究計画において述べた成人と小児を想定したシミュレーション実験システムの開発に必要なモジュールはほぼ揃っており,次年度以降のより詳細な実験のための基礎が出来上がっていることから,(2) おおむね順調に進展していると評価する.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度にシミュレーション実験システムの開発に必要なモジュールがほぼ揃ったことから,今後はこのシステムを用いて,成人と小児におけるデルタ波の現 れ方の違いを検証するために,成人と小児の心臓サイズの差異,壁厚,心拍数,Kent 束の長さ・太さ・数,伝導速度といった諸条件を変化させながら,網羅的にシミュレーション実験と解析を行う.合わせて,胸郭内における位置や心長軸の向きの差異,体表面心電図の電極位置と心臓との相対位置の差異が,デルタ波の現れ方にどう反映されるかについても検証を行っていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは,効率的な執行に務めたためである. 本研究計画に関連して申請した国際共同研究加速基金が採択に至らなかったことから,次年度の海外旅費の一部として使用する計画である.
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