19年度は、豪州Prince Charles病院Fraser教授研究室ならびにGriffith大学Simmonds博士研究室との共同研究成果として、せん断により誘発される溶血・赤血球変形能低下・血小板活性の同時相関性を検証できた事、またそれらは血小板活性、変形能低下、溶血の順に生じる事実を見出し11月の国際人工臓器学術大会にて報告できた。加えて、せん断に起因した血小板凝集塊サイズを定量化する事で、血漿タンパクvWF機能を評価する方法を提案し、これを応用して、せん断速度3000[1/s]において血小板凝集能がピークを示す事を明らかにできた。この成果は11月に大阪で開催された人工臓器学会にて修士学生井上君がポスター発表し、優秀賞を頂いた。また、流れ環境で見られる損傷赤血球の異常形状に対して画像解析から同定する方法を提案し、8月にバンコクで開催された国際精密技術学会にて発表した。また、赤血球の膜酸化度測定手法を応用し、赤血球が加齢およびせん断負荷に伴いその膜酸化が進む傾向がある事を明らかにし、10月伊国にて開催された国際血液ポンプ学会にて報告した。申請者らはこれまでに一様せん断に起因した血液損傷現象の一部を解明できたと言えるが、更に変化するせん断流れ環境下で検証すれば、医療現場で利用される機械式補助循環を想定した現象解明ができる見込みである。そこで、次年度も引き続き、機械式補助循環環境下における血液損傷現象を解明する方向で、豪州研究者および新たに独国Charite研究所を加えて、国際共同研究を実施する事で同意した。本研究成果をまとめると、赤血球のせん断刺激に対するNO産生現象解明、過度のせん断負荷刺激よる赤血球損傷の可視化、血小板凝集能がせん断依存性を示す事、せん断刺激により赤血球膜酸化が進む事実、をそれぞれ明らかにできた。上記の研究成果は学術論文2編として採択済である。
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