研究課題/領域番号 |
17K01372
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
王 作軍 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10758080)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 急性期脳梗塞 / 超音波 / マイクロバブル |
研究実績の概要 |
急性期脳梗塞患者は血栓溶解治療薬rt-PAの投与を受けても、さらに経頭蓋超音波照射ないし超音波増強剤マイクロバブル(MB)の投与を加えても、半分近くは閉塞血管が再開通しない。血流が完全に止まった状態では薬物が血栓に到達・浸入できないことが、このように再開通率が著しく増加しない原因と考えられる。 申請者は超音波音場中のMBの動きをシミュレーションし、MBが超音波照射を受けて非常に速く音場の伝搬方向へ動く現象を発見し、完全閉塞した脳動脈に対しても早く再開通させられる新しい超音波血栓溶解治療法を考案した。本研究はin vitro実験を行って、このシミュレーションとの整合性を解明し、この新療法の実現を目指す。 2019年度は、in vitro実験系をさらに改良した。新しいin vitro中大脳動脈閉塞(MCAO)モデルは、超音波の透過性と光学的透明性を併せ持ち、目標への超音波照射強度及び模擬血管内の疑似血液の血流量を精密的にコントロールできるようにすることを実現した。これで、in vitro研究の定量性及び獲得データの将来臨床への指導作用が高くなることが期待できる。 さらに、本研究中使う予定のマイクロバブルの最も重要な基本的な指標、そのサイズの測定に関して、現有測定法のリミット及び不確実さを克服すべく、ミー散乱理論に基づいて、新しい光学的精密測定方法を考案・検討し、今はほぼ完成した。 これから、関連する研究成果の論文投稿と同時に、新しいin vitroモデル及び新しい精密光学測定法を用いて、超音波のマイクロバブルに対する輸送作用および破砕作用の定量的研究を行い、急性期脳梗塞患者の新しい治療法の基礎的理論の完成を目指して行く。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究において重要な基礎としてのin vitro実験モデルの考案および作製は、3D-CADシミュレーション技術、及び3Dプリンター技術等を用いて、試行錯誤の末、ほぼ完璧に完成した。それに加えて、シミュレーション及びin vitro研究上非常に重要なパラメータ:マイクロバブルのサイズの精密測定技術も検討し、新しい光学測定法を考案し、理論上のシミュレーション研究はもう完成し、今実際撮った画像との一致性研究を進んでいる。 ただし、新しいモデルを用いてのin vitro検証実験およびrt-PAを担持したMBの作製実験はまだ実施していなかったので、本研究は現在遅れている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロバブルのサイズの精密測定技術を速やかに完成し、論文を投稿した後、新規開発したin vitro中大脳動脈閉塞(MCAO)モデルを用い、マイクロバブルのサイズを最新の精密測定方法で確認した上で、まず市販の超音波造影剤での輸送に最適な超音波条件(周波数、音圧、パルス長さ、PRF等)とマイクロバブルのサイズの関係を検討する。 続いて、rt-PAを担持したマイクロバブルを作製し、そのサイズ及び物性を測定した上で、超音波照射下でその運搬、薬物放出、及び血栓溶解促進作用を調べ、そのシミュレーション研究との整合性を解明し、本治療法の基礎理論を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の質を確保するために、マイクロバブルの安定性及びサイズ測定について、新しい原理及び方法を考案し、それらの実現に向けて、文献調査、予備実験、理論的研究及び実証研究を行ったが、当初計画した市販品のMBを用いたin vitro検証実験およびrt-PAを担持したMBの作製実験はまだ実施していなかったので、次年度使用額が生じた。これから、上述の実験を行うために、残った使用額を使用する計画である。
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