研究課題/領域番号 |
17K01376
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
三上 あかね (坂口あかね) 東京工科大学, 医療保健学部, 講師 (70469782)
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研究分担者 |
山崎 智彦 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (50419264)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生体情報・計測 / 細胞内計測 / 糖化関連疾病 / 糖化物 / 腫瘍細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では,糖化の腫瘍関与機構解明のための,マルチプレックス細胞内モニタリング技術の構築,及び,これを用いた腫瘍細胞機能と糖化の関連を評価することを目的とした.平成29年度は,複数の細胞内モニタリングシステムを組み合わせ,糖化及び細胞機能のリアルタイムモニタリングを可能とするための,複数の細胞内糖化関連物質に対する細胞内モニタリング測定系の構築および評価を行った. まず,先に構築した初期糖化産物(糖化アミノ酸)特異的応答性転写調節因子に基づくレポーターアッセイ技術および緑色蛍光タンパク質を用いて細胞内糖化アミノ酸リアルタイムモニタリング法の構築を行った.ヒト肝がん細胞を用いて本技術の評価を行ったところ,培地糖濃度の増加に伴い,蛍光強度の増加がみられたことから,本技術を用いた細胞内糖化アミノ酸のリアルタイムモニタリングが可能であることが示唆された.次に,終末糖化産物(AGEs)応答性のRAGEプロモータおよび赤色蛍光タンパク質を用いてAGEsに対する細胞リアルタイムモニタリング法を構築し,ヒト肝がん細胞を用いて本技術の評価を行った.更に,他の細胞内糖化関連物質モニタリング用素子として,新規糖化タンパク質応答性転写調節因子およびメチルグリオキサール認識素子の開発を行った. 今後,これらのモニタリング技術,および既存の細胞周期依存的に発現するタンパク質のプロモーター領域を利用したレポーターアッセイ技術,および炎症反応特異的に活性化されるシグナル伝達系路のレポーターアッセイ技術と組み合わせることで,細胞内糖化経路の複数の過程における同時計測,また,複数の細胞機能の指標物質に対する同時細胞内リアルタイムモニタリングが可能になると期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以前に構築したルシフェラーゼをレポーターに用いたモニタリング系に比べ,今回構築した蛍光タンパク質を用いたリアルタイムモニタリング系では,細胞あたりのレポーター発現量(蛍光強度)のばらつきが大きく,各培養条件における細胞内糖化物あるいはAGEs濃度の詳細な評価は困難であった.この為,まず細胞内糖化アミノ酸リアルタイムモニタリング系を導入したヒト肝がん細胞の安定発現株を作製し,評価したところ,安定株における細胞間のレポーター発現量のばらつきは,一過性発現株に比べて,減少した.今後,個々のモニタリング系を導入した安定株を用いて,培地内糖濃度,インキュベート時間などの詳細な評価条件の検討を行った後,細胞に各系を同時に導入し,当初平成29年度での実行を計画していた,マルチプレックス細胞内モニタリング技術の構築および評価を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
まず,すでに構築したルシフェラーゼをレポーターに用いた細胞内糖化アミノ酸モニタリング技術を,既存の細胞周期および炎症反応活性化のモニタリング技術とともに腫瘍細胞に導入し,細胞内糖化の影響を評価する.AGEsはその蛍光特性を蛍光顕微鏡あるいは,蛍光分光光度計を用いて評価する.腫瘍細胞には,特性の異なる2つの骨髄白血病細胞:高分化能を維持する慢性骨髄白血病細胞,及び,分化能を有さず,高い増殖能を示す急性骨髄性白血病細胞,を用いて比較し,細胞内糖化の分化および増殖能に対する影響を評価する. 同時に,個々のモニタリング系を導入した安定株を用いて,培地内糖濃度,インキュベート時間などの詳細な評価条件の検討を行った後,上述の2つの骨髄白血病細胞に各系を同時に導入し,マルチプレックス細胞内モニタリング技術の構築および評価を行う.必要に応じて,細胞破砕液などを用いて酵素法,Real-timePCR 法などを用いて,各指標を定量し,構築した細胞内計測法の妥当性を評価する.必要な場合は,再度,各指標の検出に用いる転写調節領域の至適化,レポーター遺伝子及び遺伝子コンストラクト,遺伝子導入比率の調整などを行う.あるいは,各レポーター遺伝子を白血病細胞ゲノムに組み込んだ安定発現株を作製する. 本技術は,これまでいくつもの異なる手法を用いて評価する必要のあった細胞機能評価を,単一の計測方法(蛍光顕微鏡観察)によって行えるため,これまでにない簡便な細胞機能評価技術として期待される.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた研究より進捗が遅れたため,平成29年度に予定していた物品の購入を行わなかった.また学会への参加を取りやめたため,次年度使用額が生じた.平成30年度には,平成29度購入予定であった物品の購入を行う.また,平成29度参加を予定していた学会と同じ生体計測分野の学会への参加を予定している.その他,当初から予定していた細菌・細胞培養費、遺伝子導入用試薬,プラスティック器具類などの購入,また論文作成および学会参加の費用として使用する計画である。
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