研究課題/領域番号 |
17K01380
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
天野 晃 立命館大学, 生命科学部, 教授 (60252491)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 網膜電図 / 視細胞モデル / 光電位変換機構 / 双極細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では,従来の視覚に関する研究が,主にモノが見える原理である高次画像処理に焦点を当てた研究であるのに対し,網膜色素変性症や加齢黄斑変性症などの眼疾患に関する病態の解明を主眼を当てており,このような病態の解明に用いることができる網膜内細胞の詳細モデルの構築を目的としている. 平成29年度については,現在,視細胞の光電位変換機構に関してもっとも網羅的な実験結果を報告していると考えられる,元大阪大学教授川村らの詳細な生理実験結果を忠実に再現可能なモデルを提案し,Biophysical Journal に投稿中である. このモデルでは,視物質とトランスデューシンとの親和性など,視細胞内で生じている反応の速度定数などが必要になるが,計測されていないものなども多く,本モデルが作業仮説となっており,仮説部分について,関連分野の研究者とも議論が進められており,生体機能モデルが,実験系研究者に対する議論のプラットフォームとして機能することも確認できた. また,光電位変換機構によって生じる光応答性の電流によって,視細胞の細胞膜電位がどのように変化するかという視細胞の電気生理モデルについても,モデルの構築を進めており,主要なイオンチャネルについて,哺乳類のチャネルモデルを導入し,一部の視細胞で報告があるイオンチャネルについては,詳細なチャネルモデルを構築し,細胞モデルとして統合を行っているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初平成29年度の研究内容としていたものは,光電位変換機構モデルの構築,視細胞電気生理モデルの構築である. 光電位変換機構モデルに関しては,基本的にはモデルの構築は完了しており,論文投稿時の査読結果への対応等による小変更が必要になっている状況である.これらの点から,この項目に関しては,ほぼ順調に進んでいるといえる. 視細胞電気生理モデルの構築についても,既知のイオンチャネル,トランスポーターについてはモデルへの導入は済んでおり,モデルのイオン恒常性などは確認できている.一方,視細胞の詳細な電気生理的報告は少なく,イオンチャネルなどに関しては,7割程度は他の細胞種のチャネルモデルを流用している状況である.現時点で,哺乳類の視細胞に関する電気生理的報告はほぼ再現できることを確認しているが,論文投稿までに,より網羅的に報告されている実験データを確認する予定である.したがって,こちらの項目についても,おおよそ想定通りに進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度については,当初の予定通り,まず,視細胞,特に光電位変換機構に関わる眼疾患を調査し,モデルでの再現が可能かどうかを検討する.また,視細胞モデルの構築に平行して,生理的な状態および疾患がある場合について,網膜で消費されるエネルギーに関する報告を調査し,提案モデルを用いた再現が可能かどうか,基礎的な評価を行っていく予定である.さらに,視細胞以外の細胞種が構築できた場合に,網膜電図を計算する網膜電図生成モデルについて,バイドメインモデルを利用したモデル化を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた論文投稿が,平成29年度に採択とならなかったので,投稿に関連する費用が発生しなかったため.現在投稿中であるので,平成30年度には,繰越分を支出予定である.
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