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2020 年度 実施状況報告書

病因解明を目的としたイオン・エネルギー恒常性を有する視細胞モデルの構築

研究課題

研究課題/領域番号 17K01380
研究機関立命館大学

研究代表者

天野 晃  立命館大学, 生命科学部, 教授 (60252491)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2022-03-31
キーワード視細胞モデル / 双極細胞モデル / 光電位変換機構 / 網膜電図
研究実績の概要

本研究では,従来の視覚研究が,主に画像認識機能に関わる網膜および中枢における高次画像処理に関するものであったのに対し,網膜内の信号処理を担う要素である視細胞や双極細胞の生理的機能をモデル化することで,これらの機能要素の機能と疾患による機能の変性を解析することを目的としている.
昨年度は,視細胞のモデルの構築において,光感受性の電流の再現は完了しているので,他の重要な電流である NCX および NCKX 電流についてモデル化を行った.これらのモデルとしては,経験的な数理モデルはあるが,物理化学的な原理から導出されたモデルはなかったため,イオンの膜輸送に関わるエネルギーを考慮したモデルを構築した.イオントランスポーターのモデルとしては,物理化学的制約を満たす先進的なモデルの構築に成功したと考える.
また,視細胞および双極細胞のモデルについては,樹状突起,細胞体,軸索終末の3コンパートメントのモデルを検討しているが,細胞膜電位は共通としたうえでコンパートメントごとに独立してイオン濃度恒常性を有するモデルの実現には成功している.これらのコンパートメント間に電流,あるいはイオンが流れているかという点が報告されておらず,コンパートメント間の物質輸送に注目して検討を行った.
まず,1次元的に,視細胞,双極細胞を配置した分布定数回路モデルを構築し,細胞膜電流を配置することで,細胞内および細胞外の電位,電流分布を計算するモデルを構築した.このモデルの両端の電位差は網膜電図(ERG)に相当するが,電位差が生じるためには,細胞内の電流が必須であることが確認できた.一方,細胞内の拡散輸送ではイオンはほぼ移動しないことも確認できた.これらの知見を導入することで,網膜電図のa波を再現するモデルの実現に成功した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

現在までに,モデルの構築と,モデルによる正常網膜電図の再現や,病態における網膜電図の変化については,想定していた精度の結果が得られており,研究内容そのものについては,計画よりも進んだ結果が得られている.

一方,構築したモデルの出版においては,本研究が既報文献の計測データを利用したモデル構築の研究であり,既存の学術雑誌の中で適切なものが見つかっていないため,実験データがない,等の理由で不採択が続いており,この点において,本研究の進捗はやや遅れている.

今後の研究の推進方策

2021年度については,研究成果の一つである光電位変換機構モデルの出版に重点を置く予定である.次に,構築したモデルの詳細化として実現した物理化学的制約を考慮した NCX モデルおよび NCKX モデルについて出版を行う予定である.さらに,モデルとしては,ERGの生成に必要になる視細胞と双極細胞間の信号伝達機構についてモデル化を行い,最終的にERGにおけるa波およびb波の再現を目指す.また,視細胞および双極細胞に関する種々の疾患について,モデルで再現することで,疾患に特有のERG波形を再現することを最終的な目標とする.

次年度使用額が生じた理由

研究の実施状況で説明した通り,現在までに計画していた研究成果の出版が遅れており,出版に要する予算が支出されていない状況である.このため,次年度使用額が生じている.これらについては,2021年度の出版を目指しており,採択された場合は出版に要する費用として支出される予定である.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Exploring the role of fatigue-related metabolite activity during high-intensity exercise using a simplified whole-body mathematical model2020

    • 著者名/発表者名
      Yuttamol Muangkram, Megumi Honda, Akira Amano, Yukiko Himeno, Akinori Noma
    • 雑誌名

      Informatics in Medicine Unlocked

      巻: 19 ページ: 100355

    • DOI

      10.1016/j.imu.2020.100355

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Specific decreasing of Na+ channel expression on the lateral membrane of cardiomyocytes causes fatal arrhythmias in Brugada syndrome.2020

    • 著者名/発表者名
      Tsumoto K, Ashihara T, Naito N, Shimamoto T, Amano A, Kurata Y, Kurachi Y.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 17;10(1) ページ: 19964

    • DOI

      10.1038/s41598-020-76681-3

    • 査読あり
  • [学会発表] 発現系で同定したキネティクスに基づく3つのタイプの洞房結節ペースメーカー細胞カルシウムチャネル数理モデルの構築2021

    • 著者名/発表者名
      張芸馨,姫野友紀子,豊田太,野間昭典,天野晃
    • 学会等名
      第98回日本生理学会大会
  • [学会発表] 刺激頻度依存性を再現するIKrチャネル阻害数理モデルの開発2021

    • 著者名/発表者名
      川上智久,中西優奈,姫野友紀子,野間昭典,天野晃
    • 学会等名
      第98回日本生理学会大会
  • [学会発表] 等容性弛緩期における筋節長変化の有無が循環動態に与える影響2021

    • 著者名/発表者名
      岸田昂大,天野晃
    • 学会等名
      第98回日本生理学会大会
  • [学会発表] 形式的に記述された細胞モデルのヤコビ行列を用いたパラメタ間の相互関係の解析2021

    • 著者名/発表者名
      八木祐太朗,天野晃,國枝義敏
    • 学会等名
      第98回日本生理学会大会
  • [学会発表] ヒト心室組織内における早期後脱分極応答が心室性不整脈をトリガーする2021

    • 著者名/発表者名
      島本貴生,津元国親,倉田康孝,天野晃
    • 学会等名
      第98回日本生理学会大会

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公開日: 2021-12-27  

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