研究課題/領域番号 |
17K01381
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研究機関 | 藍野大学 |
研究代表者 |
宮崎 浩 藍野大学, 医療保健学部, 教授 (00263228)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 浸透圧 / 内皮細胞 / バイオメカニクス / アクチンフィラメント / 力学的特性 |
研究実績の概要 |
本研究では,高張液・低張液による浸透圧負荷が,血管内皮細胞のF-アクチン/ストレスファイバー構造および力学的特性に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。 1) 低張液による流れ負荷が培養内皮細胞のF-アクチンに及ぼす影響: ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)を培地中で24時間静置培養した後に,作製した平行平板型流れ負荷装置を用いて,この細胞に等張液または低張液によって4時間の流れ負荷(せん断応力 = 2 Pa)を作用させた。その後, F-アクチンを蛍光染色してその状態を観察したところ,細胞密度によりストレスファイバーの状態に違いが現れる可能性があることが示唆された。 2) 低張液が培養内皮細胞の力学的特性に及ぼす影響: HUVECsを培地中で24時間静置培養した後に,等張液または低張液を30分間作用させた。その後,セルスクレイパーで細胞を掻き取って剥がし,等張液または低張液中に浮遊させてマイクロピペット吸引試験を行った。形状がいびつな細胞が多く吸引試験の成功率は低いが,低張液を作用させた細胞の弾性率は低くなる傾向がみられた。 3) 高張液が培養内皮細胞の力学的特性に及ぼす影響: 上記2) の方法と同様に等張液または高張液をHUVECs に30分間作用させた後,セルスクレイパーで細胞を剥がし,等張液または高張液中に浮遊させてマイクロピペット吸引試験を行った。吸引試験の成功率は低いが,高張液を作用させた細胞の粘度および弾性率は高くなる傾向がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
F-アクチンのライブイメージングを行うためにHUVECへの蛍光標識アクチン遺伝子の導入を試みているが,エレクトロポレーション法,リポフェクション法ともに導入効率と蛍光強度が不十分であったため,ポリエチレンイミンを利用する方法を検討中である。懸案であった細胞が接着したディッシュにおける特定範囲内からの細胞の回収は,セルスクレイパーで掻き取る方法に変えたことによってある程度達成できており,また,力学試験(マイクロピペット吸引試験)までの時間も短縮されている。しかし,剥離させた細胞の形状がいびつであるため,力学試験の成功率が低くなっている。 大阪府北部地震(平成30年)により損傷を受けた機器の一部に残っていた不具合の調整に時間を要したこと,教育業務が著しく増大したこと,条件出しの予備実験に時間を要していることが,当初の計画よりも遅れている主な理由である。
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今後の研究の推進方策 |
F-アクチンの変化を詳細に調べるためには,ライブイメージングによって同じ細胞で経時的に繰り返しF-アクチンを観察できることが望ましい。そのため,引き続きHUVECへの蛍光標識アクチン遺伝子の導入条件の確立を進めるが,ポリエチレンイミンを利用するトランスフェクション法でHUVECに対する高い遺伝子導入効率が得られるとの報告があることから,この方法による試行とトランスフェクション条件の確立を進める。また,HUVECよりも遺伝子導入が容易であるとされるウシ大動脈内皮細胞等の使用も検討する。今後,さらに,低張液・高張液による流れ負荷が培養内皮細胞のF-アクチンおよび力学的特性に及ぼす影響を調べていくが,浸透圧負荷の際の環境,細胞接着密度の影響についての検証を急ぐとともに,流れ負荷後に回収した細胞のマイクロピペット吸引試験を効率的に行う方法を確立して,力学試験を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
大阪府北部地震により損傷を受けた機器の修理・調整に時間を要したこと,実験を進める過程で新たに必要性が確認された予備実験等に時間を要していること等により,研究が計画よりも遅れており研究期間を一年間延長したため,次年度使用額が生じている。これらは,研究の推進に必要な物品の購入および学術集会への参加を行うための費用に充てる。
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