研究課題/領域番号 |
17K01383
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
松本 陽子 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (00133562)
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研究分担者 |
市原 英明 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (70369114)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 癌 / 糖鎖 / 脂質 / ナノ材料 / ナノメディシン |
研究実績の概要 |
がん治療における化学療法(抗がん剤)は、重篤な副作用が問題となっている。近年の分子標的治療薬に関しても例外ではない。そこで、より安全で治療効果の高い治療薬の開発が急務である。トレハロースは、脱水や凍結などのストレス下で細胞を安定化させ、細胞内シグナル伝達、細胞の成長・分化に関わっていることが示されている。申請者は、最近、トレハロースミセルおよびリン脂質から構成されるトレハロースリポソームを新たに創製し、大腸がん、胃がん、肝臓がんに対する抑制効果およびアポトーシス誘導を明らかにした。さらに、がん細胞皮下移植担がんマウスに対する腫瘍縮小効果、摘出した腫瘍の組織切片観察による アポトーシス誘導を見出している。 本年度は、女性の罹患率上位のがんである乳がんに対するトレハロースリポソーム(DMTre)の増殖抑制効果を検討した。ヒト乳がん(MCF-7)細胞に対するDMTreC14の増殖抑制効果が得られた。DMTreC14はMCF-7細胞の増殖をアポトーシス誘導により抑制した。DMTreC14によるMCF-7細胞におけるアポトーシス誘導は、チトクロームcの放出によるミトコンドリア膜電位の減少およびカスペース-6および-9の活性化に起因していた。MCF-7細胞の細胞膜へのDMTreC14の蓄積が観察され、細胞膜蓄積による細胞膜の流動性の増大が認められた。さらに、c-Jun N-terminal kinase/stress- activated protein kinase (JNK/SAPK)の活性化がDMTreC14処理により観察された。(J. Nanomedicine Biotherapeutic Discov., 8, 1000157(2018))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、難治性がんである肺がんや乳がんに対するトレハロースリポソームの抑制効果および細胞死機構を明らかにすることを目指している。 本年度は、女性の罹患率上位のがんである乳がんに対するトレハロースリポソーム(DMTre)の増殖抑制効果を検討した。ヒト乳がん(MCF-7)細胞に対するDMTreC14の増殖抑制効果が得られた。DMTreC14はMCF-7細胞の増殖をアポトーシス誘導により抑制した。DMTreC14によるMCF-7細胞におけるアポトーシス誘導は、チトクロームcの放出によるミトコンドリア膜電位の減少およびカスペース-6および-9の活性化に起因していた。MCF-7細胞の細胞膜へのDMTreC14の蓄積が観察され、細胞膜蓄積による細胞膜の流動性の増大が認められた。さらに、c-Jun N-terminal kinase/stress- activated protein kinase (JNK/SAPK)の活性化がDMTreC14処理により観察された。(J. Nanomedicine Biotherapeutic Discov., 8, 1000157(2018))。 現在は、エストロゲンレセプター(ER)陽性のMCF-7細胞と異なり、ER陰性の乳がん(MDA-MB-453)細胞に対するin vitroでの増殖抑制効果およびin vivoにおけるMDA-MB-453細胞皮下移植モデルマウスに対する治療効果について検討を進めており、良好な進捗結果を得ている。 以上のように、DMTreの肺がんおよび乳がんに対する制がん効果が得られ、当初の計画通りおおむね順調に研究課題は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の計画通り研究を進め、次の3 つの観点で研究を実施する。(1)トレハロースリポソームの創製とキャラクタリゼーション(膜直径、膜流動性、相転移温度、固定水層)。(2) トレハロースリポソームのがん細胞に対する増殖抑制、アポトーシス誘導およびアポトーシスカスケードを含むがん抑制メカニズム。(3)担がんマウスを用いたin vivo でのトレハロースリポソームの治療効果の評価、体内動態。in vivo でのアポトーシス誘導の評価。これらの結果から、トレハロースリポソームの肺がん、乳がんや脳腫瘍の抑制効果および細胞死機構の解明を進める。
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