研究課題/領域番号 |
17K01385
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
秋葉 教充 科学警察研究所, 法科学第二部, 室長 (00370883)
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研究分担者 |
宗田 孝之 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90171371)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 医用画像 / バイオイメージング / 非破壊検出 / レーザ / 蛍光 / 指紋 / 法科学 |
研究実績の概要 |
8年半前(#1)、8ヶ月前(#2)、2週間前(#3)の脱落皮膚片について、三次元励起蛍光スペクトル測定を行った。#3は275nm励起で325nm中心の蛍光が強く現れ、360nm励起でも400nm付近に蛍光が現れていた。#2では275nm励起の蛍光が弱くなり、より長波長の450nm励起で520nm付近に蛍光が現れてきた。#3ではその傾向が顕著になり、450nm励起での蛍光が、励起波長、発光波長ともに長波長シフトする傾向がみられた。以前の指紋の蛍光スペクトルの時間変化を調べた実験(秋葉ら2018)でも、初めは280nm励起の蛍光のみで、時間経過とともに弱くなり、長波長側に新たな蛍光が現れ、次第に強くなっていく様子がみられており、本実験と矛盾がなかった。今回は530nm付近での蛍光についての情報も新たに得られ、さらに経過時間による励起波長と蛍光波長のシフトについても知ることができた。 8,9年前の指紋について蛍光イメージングを行った。ステンレス板(SUS)、ポリエチレン(PE)、メンブレンフィルタ、白紙について、532nm CWレーザで励起し、ハイパースペクトルイメージャで画像を取得した。SUS、メンブレンフィルタでは鮮明に可視化でき、PEでは主成分分析を行うことで指紋像が得られた。白紙では、指紋の付着箇所は分かったが鮮明な指紋は得られなかった。これは指紋成分が浸透し拡散したことに起因する可能性がある。 昨年度までの理論的検討の検証を行った。MCR-ALSと同じく非負のスペクトル分解法である非負値行列因子分解(NMF)が比較的短時間で収束する理由は、計算に用いた主成分数が多いことが主たる原因と考えられた。一方、重畳指紋の分離精度が主成分数と必ずしも相関しないと考えられた。ハイパースペクトルデータ分解に対して、独立成分分析(ICA)の適用を検討し具体的なアルゴリズム開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
古い指紋の可視化と蛍光スペクトル測定を行った。 異なる時期に採取した皮膚片の三次元励起蛍光スペクトルを調べたところ、古い試料ほど長波長のピークが現れていくことが分かった。これらは以前の結果と矛盾しない結果であり、さらに長波長領域の情報と経過時間変化によるピークのシフトについても知見を得ることができた。 古い指紋の蛍光イメージングを行った。532nm CWレーザで励起し、ハイパースペクトルイメージャで画像を取得した。その結果、古い指紋でも可視化することができることが分かった。 ICAにおける推定対象は、復元されるべき独立な成分をハイパースペクトルデータが含む画素スペクトルの線形結合として記述するとき必要な規格化された線形結合定数ベクトルである。具体的な推定法は、その単位の線形結合定数ベクトル方向への画素スペクトルの射影が、非ガウス性の測度であるネゲントロピーを最大化する方向を見つけることである。ICAをハイパースペクトルデータに適用するときの理論的検証をほぼ終え、プログラムを作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を延長したため、引き続き経時変化に関する実験を行う。三次元励起蛍光スペクトル測定や、ハイパースペクトルイメージャを用いた指紋の可視化を行う。さらに、ハイパースペクトルデータの解析手法として、引き続きICAの検討を行う。また、学会等での成果発表および論文作成を行い、研究のまとめを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の進行が遅れたため、予算執行を行えなかった。次年度は主に実験消耗品の購入及び成果発表のための旅費と参加費にあてる予定である。
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