研究課題/領域番号 |
17K01387
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構大阪刀根山医療センター(臨床研究部) |
研究代表者 |
遠藤 卓行 独立行政法人国立病院機構大阪刀根山医療センター(臨床研究部), 独立行政法人国立病院機構大阪刀根山医療センター, 研究員(移行) (40573225)
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研究分担者 |
佐古田 三郎 独立行政法人国立病院機構大阪刀根山医療センター(臨床研究部), 独立行政法人国立病院機構大阪刀根山医療センター, 名誉院長 (00178625)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生体制御治療 |
研究実績の概要 |
(1)パーキンソン病患者における時計遺伝子発現の概日位相の検討 睡眠リズム障害がある16名のパーキンソン病患者について高照度光療法前後の時計遺伝子発現を調べた。まず問診票による睡眠評価(JESS、PDSS-2)を実施し、被験者は起床・食事・就寝時刻などを一週間以上一定に保った。試験日には24時間にわたって、6時間ごとに毛根(髪の毛またはあご髭)を5本程度採取した。毛根に付着した細胞から、時計遺伝子の発現量(Period3、Nr1d1、Nr1d2など)を測定した。これらのデータより、コサインカーブフィッティングを行うことで概日時計位相を決定した。高照度光療法後に睡眠が改善したほとんどのパーキンソン病患者は概日位相シフトを示し、概日変調と睡眠改善との相関を示した。さらに追加実験として、慢性ドパミン作動性刺激が、ex vivo培養マウス視交叉上核の単一ニューロンレベルで、時計遺伝子発現の自律振動の急速な減衰を引き起こすことを発見した。脳内リンパ系は視交叉上核が制御する概日リズムに支配されていると考えられるため、このように毛根細胞から簡便に抽出できる時計遺伝子の転写産物は有用なバイオマーカーとなりうる。 (2)脳内リンパ系新規バイオマーカーの探索 12例のパーキンソン病患者の生化学データより、甲状腺機能は正常ながら非常に高いTSH値を示し、高照度光療法3ヶ月実施後にそのTSH値が大幅に下降するという現象が一部にみられた。近年TSHには長日刺激により下垂体隆起葉で産生されるPT-TSHが存在することが指摘された。通常の甲状腺を刺激するホルモンPD-TSHとは糖鎖が異なり、PT-TSHはヒトにおいても存在し睡眠と関係する報告がある。今後、パーキンソン病患者における甲状腺ホルモン、特にPT-TSHの役割を検討し、脳内リンパ系のバイオマーカーとしての可能性を探る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳内リンパ系バイオマーカーとして、パーキンソン病患者の毛根細胞から抽出した時計遺伝子発現が有用であることを示し、国際英文誌でその成果を発表した。 新たなバイオマーカー候補としてTSHが有用である可能性を発見した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、パーキンソン病患者における甲状腺ホルモン、特にPT-TSHの役割を検討し、脳内リンパ系のバイオマーカーとしての可能性を探る。 これまでの研究成果を国際学会、国内学会で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果発表のため参加予定であった国際学会が、新型コロナウイルス感染拡大のために中止となってしまったため研究期間を一年間延長し、次年度使用額が生じることとなった。使用計画としては、上記研究成果発表のための学会参加費および旅費、また今後の研究課題としていたパーキンソン病患者データの解析費用として使用予定である。
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