研究課題
日本が迎える超高齢化社会において、再生力や免疫力が低下した有病者や高齢者に対し、人工関節置換術を確実に行うには、高い骨伝導性と抗菌性を有するインプラント材料を使用することが望ましい。しかしながら、既存のインプラント材料はこれらの要件を十分に満たしているとは言い難いのが現状である。我々は、優れた機械的性質と生体親和性を有する窒化ケイ素セラミック(Si3N4シリコンナイトライド)が、表皮ブドウ球菌や歯周病菌に対し抗菌性を有することを報告した。しかしながら、これまで窒化ケイ素が骨原生細胞に与える影響についての基礎的な研究は、あまり行われてこなかったことを踏まえ、本研究は、in vitroやin vivoの系において、窒化ケイ素が骨芽細胞や間葉系幹細胞に効率的に与える影響を明らかにし、窒化ケイ素が次世代の人工関節デバイスになり得るか検討する。
2: おおむね順調に進展している
窒化ケイ素基板上にマウス間葉系幹細胞株KUSA-A1を窒化ケイ素の基板またはチタン合金(コントロール)の基板上に播種し、骨誘導条件で培養した。24時間後、窒化ケイ素基板とチタン基板に接着した細胞を蛍光標識したファロイジンで染色し、蛍光顕微鏡で観察した。14日間後、基板上に沈着したハイドロキシアパタイト(骨の主成分)の局在をレーザーラマン顕微鏡で解析した。また、非コラーゲン性の骨基質タンパク質であるオステオカルシンとIGF-1(インスリン様成長因子:Insulin-like Growth Factor-1)をELISAで測定した。実験の結果、窒化ケイ素の基板に接着した細胞数はチタン基板よりも4倍以上多かった。窒化ケイ素の基板上で培養したKUSA-A1はコントロールと比較し、より多くのハイドロキシアパタイトを産生した。窒化ケイ素基板上で培養したKUSA-A1は、コントロールと比較し、より多くのIGF-1とオステオカルシンを産生した。以上の結果から、窒化ケイ素はチタン以上の骨誘導能を有することが明らかとなった。
in vitroの系において、窒化ケイ素はチタン以上の骨誘導能を有することが明らかとなった。今後は、実験動物(ラットかラビット)に窒化ケイ素インプラントを移植し、in vivoの系における窒化ケイ素の骨伝導能と骨誘導能を明らかにする。
計画していた実験が効率的に進み、順調に進んだ為、実験にかかる消耗品等が想定を下回った為。次年度に学会での発表行うため次年度へと繰越を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件)
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