研究課題/領域番号 |
17K01390
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
伊藤 智子 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 客員研究員 (80372910)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エクソソーム製剤 / 結核菌抗原 / ネオ・エピトープ / 樹状細胞 / ガン免疫治療 |
研究実績の概要 |
ガン免疫治療においては腫瘍関連抗原が攻撃ターゲットの候補となるが、一般の非変異型の腫瘍抗原は免疫原性が低く、ネオ・アンティジェンを持たない腫瘍細胞に対しては有効な抗腫瘍免疫が誘導されない。我々は、抗原性の高い結核菌抗原、ESAT-6の遺伝子を腫瘍細胞に導入し、「人工ネオ・アンティジェン」として発現させることで高い治癒効果が得られることを見出し報告してきた。 その治癒機構として、遺伝子を取り込んだ腫瘍細胞がESAT-6のエピトープを「人工ネオ・エピトープ」として提示したエクソソーム(ESAT-Ex)を分泌し、それを捕食した樹状細胞がこの結核菌抗原を「外来危険信号」と認識して活性化、成熟し、微生物抗原と同時に腫瘍に対して細胞性免疫を強く惹起すると考えた。このメカニズムを証明するために、培養細胞でESAT-Exを調製し、担癌モデルマウスに投与したところ、高い抗腫瘍効果が観察された。マクロファージ等の活性化への介在の可能性を調べるため、自動磁気細胞分離装置によって単離した培養樹状細胞にESAT-Exを添加したところCD86の有意な発現向上が見られ、マクロファージに依存しないESAT-Exによる直接の樹状細胞の活性化を確認した。 これらと平行して、エクソソームの分泌量、表面へのESAT-6エピトープの提示量などを細かく分析した。エクソソームの分泌量は表面アセチルコリンエステラーゼの活性測定により定量した。また、Tim-4固定化プレートにエクソソームを吸着させ、抗ESAT-6抗体、標識二次抗体を加えてESAT-6エピトープを定量し、プラスミドDNA/PEI/コンドロイチン硫酸三元複合体システムを用いることで、エピトープ提示量の高いエクソソームが効率よく大量に得られることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施計画に基づき、人工的にネオ・エピトープを導入したエクソソームの調製方法の最適化の検討を行った。Tim-4固定化プレートを用いてエクソソームを吸着させ、抗ESAT-6抗体、標識二次抗体を加えることで、再現性の良い表面解析ができるようになった。また、表面アセチルコリンエステラーゼの活性測定方法を確立し、エクソソーム分泌量を定量することが可能となった。これらの手法を用いて遺伝子導入などの最適条件が得られた。 さらに、ESAT-Exによる樹状細胞の活性化機能を、自動磁気細胞分離装置(オートマックス)で単離した培養樹状細胞で評価する手法が確立され、マクロファージに依存しないESAT-Exによる直接の樹状細胞の活性化を確認した。しかし、これらの解析条件の確立に想定より時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、エクソソームの分泌量、表面へのESAT-6エピトープの提示量などを細かく分析するとともに、エクソソームの単離方法による影響を詳細に検討し、"ESAT-Ex"を調製・単離するための最適条件を求める。 また、これまでin vitroで検討してきたエクソソームの保存条件について、in vivoでの機能評価を加え、保存安定性の良い条件を確立する。 一方、ガン免疫治療においては自然免疫の効果も重要である。ESAT-6遺伝子の投与が自然免疫を効率よく活性化することを以前の実験で確認している。そこで今後は培養マクロファージを用いて"ESAT-Ex"への応答を調べ、"ESAT-Ex"の自然免疫活性化への応用についても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由: in vitroの解析に時間を要しin vivo実験に用いる材料費が次年度に生じたため 使用計画: in vivo実験に必要な抗体やプラスチック類、マウス等を購入する。実験や打ち合わせのための旅費、学会への参加旅費に使用する。
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