前年度までに構築した選択式脳低温療法用温度管理試作機についての稼働実験をおこなった.このために全自動で温度管理をおこなう制御プログラムを構築した.2017~2018年度にかけて製作した病態型モデル脳を制御対象とし,2018年度に数理シミュレーションにより実用性を検討してきた,4つの温度制御アルゴリズムを,試作機の稼働プログラムに組み込み,スイッチで切り替えるように設定した.アルゴリズムごとに温度管理実験をおこない,一定程度の温度管理が可能であることを確認した.アルゴリズムごとに,パラメータを細かく調整して,より精密な温度管理が可能であることが示唆された. さらに,温度管理実験中の消費電力を実測し,臨床で供給可能な電力の範囲内で,上記温度管理が可能であることを検証した. これらの成果については,国内で開催された2つの学会で,その成果を発表した. また,病態脳の内部状態をパラメータするための手法について,各方面の専門家を交えて検討をおこなった.実験データとの比較により,計算の条件を限定して内部状態を推定できる可能性が示唆された.数理シミュレータにより,試作機の実験データを活用して内部状態を推定する手法を提案し,これを拡張するために必要なリソースを算出した.これに基づいて数理シミュレータの演算構造の再設計をおこない,新しいシミュレータの開発に着手した.現在これを用いた内部状態推定アルゴリズムの試験をおこなっている.
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