研究課題/領域番号 |
17K01410
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
浅沼 俊彦 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教授 (80379271)
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研究分担者 |
増田 佳純 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20533293)
中谷 敏 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (80393221)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心不全 / 心エコー / 心筋ストレイン |
研究実績の概要 |
近年、心不全の原因疾患として、虚血性心疾患の増加が注目されている。虚血障害部位には線維化が生じ、同部は硬くなる。この「心筋の硬さ」は、心不全の発症リスクに大きく影響すると考えられる。スペックルトラッキング心エコーによる心筋ストレイン解析は、early systolic lengthening (ESL)や、post-systolic shortening (PSS)という微細な心筋運動の評価を可能にした。 このような微細な心筋運動の大きさは、「心筋の硬さ」に従って変化することが示唆されているため、われわれは、ESLやPSSを解析することで、局所の「心筋の硬さ」の定量評価が可能であるとの仮説を立てた。 平成29年度は、雄性SDラットを用い、ESLやPSSを評価することで、心筋線維化の推定が可能かを検討した。左冠動脈前下行枝を閉塞し、ランダムに「(閉塞)1日後群」、「7日後群」、「30日後群」の 3群(各群8匹)に分け、それぞれの期日でスペックルトラッキング心エコーを行った。その後、心筋組織標本から虚血領域の線維化面積を、マッソン・トリクローム染色で評価した。心筋ストレイン解析により、虚血領域の収縮期最大ストレイン、ESL、およびPSSの指標を算出し、これらの指標が線維化面積を推定できるか検討した。 虚血領域の線維化面積率は、「30日後群」が、「1日後群」と「7日後群」と比べて有意に高値を示した。線維化面積率と各ストレイン指標には有意な負の相関が認められた(相関係数:収縮期最大ストレイン -0.67、ESL -0.76、PSS -0.59)。ROC解析による診断精度においても、ESL指標が最も優れた診断精度を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度のラットによる検討は、脱落群を除外しても、各群8匹での検討を行うことができたことから、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、イヌ冠動脈閉塞モデルを用いた検討を行う。「虚血領域にエタノールを注入しない群」、「60%エタノールを注入する群」、「100%エタノールを注入する群」の3群を作製し、エタノール注入前後でスペックルトラッキング心エコーを施行後、摘出した心臓において、デジタルフォースゲージを用いて、虚血領域の「心筋の硬さ」を計測する。心筋ストレイン解析により、虚血領域のESL及びPSSの指標を算出し、これらの指標が実際の「心筋の硬さ」を推定できるか評価する。 平成29年度において、すでに前実験を並行して行い、虚血領域にエタノールを注入することで、虚血領域の硬度を変化させるモデルの作製は可能であることを確かめている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が概ね順調に進展しているため。残預金(26,337円)は次年度使用額と合わせて、実験動物の購入予算などに充てる。
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