本研究では、医療費増加の大きな原因となっている生活習慣病の予防を目的とし、そのリスク要因である食後高脂血症や糖尿病を簡便に判定できる簡易血液粘度測定装置を開発し、患者のセルフメディケーションを支援する。本研究期間では簡易血液粘度測定装置のために、①血液1滴(1μL程度)で全血および血漿の粘度測定を可能にするマイクロ流体チップの研究、②マイクロ流体チップ上で全血成分から血漿成分を測定するための血球分離機構の研究、③マイクロ流体チップの大量生産化研究の3つに関して取り組んでいる。 本研究の粘度測定では、サンプル血液の電気伝導率から粘度を導出する。しかし、全血の電気伝導率の測定では、測定結果が安定しないという問題が生じている。これは血球成分が電気伝導に影響を及ぼすためと考えられており、血液の粘度を評価するためには血漿成分のみの電気伝導率評価を行わなければならない。 この問題を解決するために、サンプル血液より血球分離を行い血漿の電気伝導率を評価するマイクロ流体チップの研究を進めた。H29、H30年度で行ったPDMS製マイクロ流路、およびシリコンの半導体加工により作製したマイクロ流体チップにより、血漿疑似サンプルを用いて分離機構の研究を行い、血漿分離流路の作製に成功した(課題②)。 本研究により、マイクロ流体チップは微量サンプルのポンプレスな送液が可能になり、簡易測定が可能となった(課題①)。また、半導体工程を併用する事で大量生産性の高いチップを考案する事ができた(課題③)。ゆえに本研究期間において、微量のサンプルから血漿分離、簡易粘度測定が可能になり目的が達成できた。 また、本研究の測定方法を応用・改良した内容の特許出願をH30年度、R元年度に行っており、この特許を元に企業との共同研究がスタートした。
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