研究課題/領域番号 |
17K01418
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
北間 正崇 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (50285516)
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研究分担者 |
清水 孝一 早稲田大学, 理工学術院(情報生産システム研究科・センター), 教授(任期付) (30125322)
加藤 祐次 北海道大学, 情報科学研究科, 助教 (50261582)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光透視 / 光散乱 / 光拡散 / 医用画像 / 透析 / シャントトラブル / 内シャント / 血管透視 |
研究実績の概要 |
慢性腎不全患者が人工透析を行う際に必要な内シャントは,頻回の穿刺等が原因で狭窄や閉塞などの血管異常が多く発生することから,日々の管理による早期診断が重要となる.血管異常の初期発見精度は担当者の経験に左右され,安定した血管状態検出による患者負荷の低減が望まれる.これに対し本研究では,申請者らが確立した拡散光利用による内シャント構造の描出技術を推し進め,これまでX 線造影が主流であった経皮的血管形成術(PTA)の施術判断を観察者の経験によらず,無侵襲かつ簡易なシステムで実現し臨床医療に貢献できるだけの学術的知見を得ることを目的とする.本年度は,提案する計測システムの臨床利用を考慮して,想定される前腕部血管構造を模擬したファントムにより計測結果の定量性を評価すると共に患者負担を低減すべくシステムの改良を行った. 1.様々な血管狭窄状態を模擬したファントムを新たに構築し,多波長計測システムによる狭窄状態の定量的抽出の可能性について検討した.昨年度に構築,検討を行った2波長同時計測システムを改良することで血管内径値の計測精度を高めることが実現でき,様々な構造の狭窄においても描出が可能なことを示した. 2.臨床利用に向けた計測システムの最適化を目指し,システムの根本から見直しを行った.その結果,カメラ部の小型化,画像取得および処理系をワンボードPCに集約すると共にオリジナルの筐体を作製することで,画像演算やデータ保存に用いる大型PCを計測現場に持ち込むことが不要となりダウンサイジングを実現した.加えて照射光の形状や患者固定部の最適化により,臨床現場で患者の精神的,身体的負担の大幅な軽減が可能な計測システムを構築できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に従い,計測システムの最適化について検討を進めている.血管形状・性状を描出し高い精度で狭窄の進行を観察できるよう,当初は3波長光源を用いたシステムの構築を目標としていたが,検討の結果,2波長計測システムを改良することで高精度な血管イメージングが実現でき,狭窄の進行を経時的に観察できる可能性を示すことができた.また臨床現場での使用を考慮して,患者の精神的,身体的負担を軽減するために計測システムの構成を根本から見直し,大幅なダウンサイジングと低拘束化を実現できた.現時点で3波長光源による検討は遅れているものの,目標としてきた血管内径の経過観察が十分な精度で実現できることを,ファントム実験を通して示すことが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
光による無侵襲血管イメージングシステムの構築を目指し,これまでの研究成果を踏まえて,今後は以下の項目ついて研究を推進する. ・様々な血管形状や走行を考慮したファントムによる計測システムの定量評価 ・透析患者を対象とした計測と取得画像の評価 ・臨床現場で使用されている超音波診断装置による血管状態記録と本システムによる記録法の比較検討 ・血管形状の経時変化をデータ化して提示するソフトウェアの構築
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に予定していた3波長レーザーダイオード(LD)光源を用いた計測システムについて,現時点で臨床現場での使用を考慮した小型化システムに2波長までは組み込んでいるものの,3波長化は検討中であり,次年度以降に追加する予定である.またデータ取得・画像処理システムは装置の小型化とワンボードPCの適用に合わせて再構築を進めているが,より高性能な処理系を組み込む所までは進んでおらず,消耗品(光学部品類,機構部員類,電子部品類,記録材料類,ファントム材料)の一部は支出できていない.そのために今年度の研究費の一部を次年度に繰り越すこととなった.今後,LDおよび計測システムの高速化を実現すると共に,当初の計画に沿って臨床現場で使用可能なシステムの構築に向けて研究を遂行する予定である.
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