シリコーン樹脂を用いて、ナノインプリントリソグラフィ技術により、無線駆動水晶振動子バイオセンサチップを開発した。水晶振動子表面に、プロテインAを非特異吸着させ、ウシ血清アルブミンでブロッキングした後、免疫グロブリンGの捕捉と解離を繰り返し行い、バイオセンサとしての有用性を評価した。その結果、高い再現性が得られ、また、先行研究で示されている親和性パラメータ(結合定数、解離定数、平衡定数)と同等の値が得らることを示した。 シリコーン樹脂で製作した無線駆動水晶振動子バイオセンサチップとバイモルフ構造の圧電素子を組み合わせることで、センサチップと送液機構の集積化について検討した。本デバイスは、微細流路の途中に、逆止弁と検体溶液を留めるキャビティ部を有する。キャビティ上部に設置した圧電素子は、交流電圧を印加することで上下動するため、キャビティ容積が変化する。本デバイスは、この容積変化を利用することで、検体溶液の吸引と排出を行い、センサチップへ送液するものである。動作検証の結果、流速は安定しないものの、センサチップとの送液機構の一体化に成功した。 センサチップの基材であるシリコーン樹脂と直接接合が可能な熱可塑性樹脂を用いて、3Dプリンタ技術で部品を製作し、磁性流体シール型スラスト軸受け内蔵電磁駆動小型ポンプを開発した。送液ロータの回転速度500rpmにおいて、送液性能2ml/minが得られ、磁性流体が剥離することはなかった。磁性流体シール型スラスト軸受けを内蔵した電磁駆動小型ポンプに関する先行研究の報告はなく、小型ポンプ分野において、新しい技術を提案するものである。 センサチップと電磁駆動ポンプの集積化検討として、シリコーン樹脂と熱可塑性樹脂(アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS)の直接接合について検討し、剥離せず直接接合可能な表面処理技術を構築した。
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