研究課題
生体に微弱な電流を流すと、生体内における電流密度分布(導電率分布)に応じた微弱な磁場分布も同時に発生する。この磁場を生体外側の複数点で非接触測定し、測定した磁場データを用いて電磁界の逆問題を解き、生体内の導電率分布を求めようというのがCIMT(Current Induced Magnetic Tomography:電流誘導磁気トモグラフィー)の基本的な考え方である。CIMTの実現には、高感度かつ高周波数に対応した光ポンピング原子磁気センサ(Optically Pumped Atomic Magnetometer :OPAM)が有用である。OPAMは光ポンピング現象により偏極した原子が磁気を受けることで回転し、これにより透過光の偏光面が回転する現象を利用したセンサであり、理論上SQUIDにも匹敵する感度を常温化で達成可能であり、極めて広い帯域にも対応できる。我々は、屋外でも簡便に使用できるOPAMのプロタイプの開発を行った。OPAMでは、光源部(DFB-LD)~光検出部(PD)までをすべて筐体内に固定し、電圧測定電極の代わりにI/V変換後のPD出力を入力することで、差動増幅を利用した回転角検出を行った。今年度はさらにPLL(Phase Locked Loop)回路を開発・実装を行うことで感度向上をはかった。まず、開発したOPAMの感度特性を測定した。巻線インダクタ(10mH)を磁気源として磁気を印可し、Rb蒸気セルとの距離を変化させることで磁束密度と信号の関係を計測した結果、50kHz以上の高周波数において検出感度は6.425 [pT/Hz^(0.5)]であった。さらに、82mm*37mmのフレキシブル電極2枚を200mm間隔で平行に設置して高周波電流を印加し、電極間中央に手および直径30mm・高さ50mmのアルミ円柱を入れたところ、非接触で物体の有無が識別できた。
すべて 2020 2019
すべて 学会発表 (8件) (うち招待講演 3件)