研究課題
●高カウントレートCdTe検出器の開発:高速の電荷有感増幅器と整形増幅器を試作し,小型CdTe検出器との組み合わせで,最大50kcps/pixelのカウントレートを実現した。●クアッドエネルギー(QE)カウンターの開発:4対の高速コンパレーター,マイコン,FVCからなるQEカウンターを試作し,CdTe検出器と組み合わせた。次いで,4個のコンパレーターにより4値のスレッショルドエネルギー(20,33,50,65 keV)を設定した。このカウンターではマイコンによりフォトンカウント・エネルギーサブトラクションが行われ,PCにより画像再構成が行われた。●QE-CTスキャナーの開発:スキャン速度25mm/sの振動式リニア検出器を開発し,ターンテーブルと連動させた。次にQEカウンターを搭載し,4レンジのスレッショルドエネルギーを決定した。IとGdのKエッジCTを行うためのレンジはそれぞれ33-50と50-65keVであった。また,管電圧と管電流の最大値はそれぞれ110kVと0.30mAであった。このQE-CTスキャナーでは,CdTeのリニアスキャンにより被写体のプロジェクションデータを取得し,被写体を回転する。次に,被写体のスキャンと回転を繰り返すことにより得られる180のプロジェクションデータを使い,断層像が再構成された。撮影可能な被写体の最大径を60mmとする場合,最短の撮影時間は約3分であった。●基礎研究用ファントムの製作:アクリル樹脂棒を用いて造影剤やナノ粒子懸濁液を撮影できるファントムを作製した。直径30~50mmの円柱に複数の穴があいた形状のものを作製し,造影剤を入れてQE-CTや7T-MRIで撮影できる構造にした。動物操作は,動物実験指針講習会を受講し動物実験指針に従って実施した。また,連携研究者は研究の準備・遂行(癌の継代,ファントム製作,撮影実験)などを行った。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度では,予定したほとんど全ての研究計画を実施し,ほぼ予想通りの研究成果を得ることができた。特にCdTe検出器を使ったQE-CTのカウンターでは,1ピクセル当たり50kcpsのカウントレートを達成した。また,被写体透過後のカウントレートを2kcps程度に調整することにより,低カウントレートによる断層像の粒状性が著しく改善された。QE-CTにおけるGd-Kエッジ撮影のエネルギーレンジは当初50-65keVであったが,65-100keVのフォトンもGdの描出,そして筋肉・骨の濃度を下げるのに有用であることわかった。このことから,トリプルエネルギー(TE) CTスキャナーも構築し,すでに論文としてアクセプトされている。さらに空間分解能の向上も行っているところある。近年,高空間分解能のデュアルエネルギー(DE)CdTeアレー検出器が開発されたことから,コーンビームを用いた空間分解能0.1×0.1×0.1mmのDE-CTスキャナーも構築中で,第一世代のTE-CT,QE-CTに加えて,第3世代のDE-CTを使った研究成果を大いに期待しているところである。酸化ガドリニウムナノ粒子の陰性造影剤効果はすでに論文として報告済みであり,現在はナノ粒子懸濁液と7T-MRIを使った癌部位の描出に関する基礎実験を行っているところである。これまでは癌部位の栄養血管に直接懸濁液を注射したが,本研究ではウサギの耳から懸濁液を点滴する方法を採用している。ナノ粒子は毛細血管を容易に通過するが,注射前に確実にナノ粒子として分散する必要があるため,低濃度の懸濁液を点滴する方法を採用している。ウサギ肝癌のT2強調撮影では,心臓の鼓動により,少しぶれた画像が得られることから,まずは大腿に生着しているVX2癌の描出を目的としてT2強調撮影を行っているところである。
平成30年度●造影剤を使ったQE-CT撮影: 作製済みのIやGdの造影剤が入ったバイアル,アクリル樹脂,そして動物のファントムをKエッジCTとエネルギーサブトラクションを使って撮影する。本研究では,7T-MRIと共有できるGd系造影剤のGd濃度が1~10 mg/mlのファントムを高コントラストで撮影することを目指す。また,動物ファントムは研究用としてすでに作製済みのものを用いる。●MRI用酸化ガドリニウム陰性造影剤の基礎研究: 平均粒径15nmの酸化ガドリニウムの常磁性ナノ粒子を購入し,Gd濃度が10mg/ml 程度となるように生理食塩水を加えて混合し,点滴用陰性造影剤とする。一方,ファントム内に入れる場合には0.5~2.0 mg/mlのGd濃度に調整する。●酸化ガドリニウム造影剤を使った担癌動物の撮影: 大腿にVX2癌が生着した担癌ウサギを購入し,生理食塩水やブドウ糖水溶液を使った酸化ガドリニウム懸濁液をウサギの耳から点滴する。点滴後,10分程経過した後,7T-MRIを用いてT2強調撮影し,癌部位における信号強度の変化を確認する。同様に,ウサギのVX2癌をヌードマウスに継代して担癌マウスを作製し,マウスの尾から酸化ガドリニウム懸濁液を注射して造影する。●高空間分解能QE-CTスキャナーの試作: 鉛製コリメーターを用いて空間分解能を0.5×0.5mmから0.25×0.25mmにする。これに伴い再構成断層像のピクセルも0.25×0.25mmに変更する。次にGd-Kエッジ撮影のカウントレートを増して画質向上をはかるため,TE-CTスキャナーも構築する。TE-CTにおけるGd-Kエッジ撮影のエネルギーレンジは50-100keVである。
平成29年度では,予定したほとんど全ての研究計画を実施し,ほぼ予想通りの研究成果を得ることができた。当初予定していたウサギ肝癌の7T-MRIを用いたT2強調撮影では,心臓の鼓動により少しぶれた画像が得られることから,まずは大腿に生着しているVX2癌の描出を目的としてT2強調撮影を行っている。そのため,平成29年度に施行予定であった担癌動物によるナノ粒子懸濁液と7T-MRIを使った癌部位の描出に関する基礎実験の一部を平成30年度に行うこととなり,次年度使用額が生じた。平成30年度には、1) 造影剤を使ったQE-CT撮影、2) MRI用酸化ガドリニウム陰性造影剤の基礎研究、3) 酸化ガドリニウム造影剤を使った担癌動物の撮影、4) 高空間分解能QE-CTスキャナーの試作を計画している。また,これまでの研究成果の報告について論文投稿しており,国際学会での発表も予定している。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件)
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