研究課題
●造影剤を使ったクアッドエネルギー(QE)CT撮影: 基礎研究用ファントムとして作成したヨウ素やガドリニウムの造影剤が入ったバイアル,アクリル樹脂,そして動物のファントムそれぞれをKエッジCTを用いて撮影した。特に,本研究では,7T-MRIと共有できるガドリニウムの濃度が1~10 mg/mlのファントムを高コントラストで造影することを目指し,5~10 mg/mlの造影剤が高コントラストで撮影できた。また,撮影に用いた動物ファントムは研究用としてすでに作製済みのものである。●MRI用酸化ガドリニウム陰性造影剤の基礎研究: 平均粒径15 nmの酸化ガドリニウムの常磁性ナノ粒子を購入し,血中Gd濃度が最大で2 mg/ml 程度となるようにブドウ糖注射液を加えて混合し,点滴用陰性造影剤とした。●酸化ガドリニウム造影剤を使った担癌動物の撮影: 大腿にVX2癌が生着した担癌ウサギを購入し,ブドウ糖水溶液を使った酸化ガドリニウム懸濁液をウサギの耳から点滴した。点滴後,7T-MRIを用いてT2強調撮影を実施し,癌部位における信号強度の低下を確認した。●高空間分解能トリプルエネルギー(TE)CTスキャナーの試作: 鉛製コリメーターを用いて空間分解能を0.5×0.5 mm2から0.25×0.25 mm2に改善した。これに伴い画像再構成ピクセルサイズも 0.25×0.25 mm2に変更した。次にガドリニウムKエッジCTのカウントレートを増して画質の向上をはかるため,デュアルエネルギー(DE)CTスキャナーも構築した。●動物操作は,動物実験指針講習会を受講し動物実験指針に従って実施した。また,連携研究者は研究の準備・遂行(癌の継代,ファントム製作,撮影実験)などを行った。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度では,予定したほとんど全ての研究計画を実施し,ほぼ予想通りの研究成果を得ることができた。特にCdTe検出器を使ったQE-CTのカウンターでは,1 ピクセル当たり約100 kcpsのカウントレートを達成した。さらに撮影に用いるエネルギーレンジでのカウントレートを増すためにTE-CTやDE-CTも構築し,Ⅹ線の単色性は劣るが,画質の粒状性が改善された。高空間分解能のCdTeアレーと0.1 mmフォーカスⅩ線管を用いてDE-CTスキャナーを構築した。2値のスレッショルドエネルギーを決定することによりDE-CTは可能であるが,エネルギーサブトラクションを加えればTE-CTとなる。このスキャナーの空間分解能は0.1×0.1×0.1 mm3で,微小血管が3次元で撮影できた。酸化ガドリニウムナノ粒子懸濁液と7T-MRIを使った癌部位の描出に関する基礎実験では,ウサギの耳から懸濁液を点滴する方法を採用した。ナノ粒子は毛細血管を容易に通過するが,注射前にナノ粒子として分散する必要があるため,低濃度の懸濁液を点滴する方法を採用した。ウサギ大腿に生着したVX2癌のT2*強調撮影では,癌の新生血管の信号強度が少し下がり,酸化ガドリニウムの陰性造影剤としての効果が確かめられた。7T-MRIではVX2癌の層が造影無しで見えることはあるが,ブドウ糖液の静脈注射により,癌層の信号強度が少し増加した。さらにガドペンタ酸メグルミンとの併用により,癌中の低酸素領域の信号強度が著しく増加した。生理食塩水とガドペンタ酸メグルミンの組み合わせでは癌の辺縁だけの信号強度が上がることから,ブドウ糖・ガドペンタ酸メグルミンの癌造影効果が期待される。
●スペクトラルⅩ線CT: 第一世代のQE-CT,TE-CT,DE-CTにおける画像再構成ピクセルサイズを0.1×0.1 mm2に設定し,空間分解能を0.2×0.2 mm2まで改善する。次いで,ビームハードニングの概念に基づくエネルギー弁別CTを考案し,実現する。具体的には検出器の最大出力電圧を一定にし,増幅率を増加する場合のプロジェクションデータを計算し,画像再構成を行う。原理的には増幅率を高めることにより,平均フォトンエネルギーが増加する。●スペクトラル3次元Ⅹ線CT: CdTeアレーと0.1 mmフォーカスⅩ線管から発生するコーンビームを使ったKエッジCTに適する撮影条件を選択し,癌ファントムなどを撮影する。2倍拡大撮影により0.5×0.5×0.5 mm3の空間分解能を目指す。●ブドウ糖の癌造影効果: 周知のように,ブドウ糖は癌に容易に吸収される。大腿にVX2癌が生着したウサギにブドウ糖を静脈注射し,7T-MRIとT1強調撮影を用いて癌部位におけるブドウ糖の陽性造影効果の時間変化を撮影する。●ブドウ糖・ガドペンタ酸メグルミンの癌造影効果: ブドウ糖注射液に適量のガドペンタ酸メグルミンを加え,大腿にVX2癌が生着したウサギに静脈注射する。次いで,7T-MRIとT1強調撮影を用いて癌部位における造影剤の陽性造影効果の時間変化を撮影する。
担癌ウサギを用いた動物実験は、次年度へ継続して行うものであり、次年度への使用額が生じた。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 8件)
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