世界数千万人の糖尿病者が毎日インスリン注射を行うが、皮膚より薬剤を投与するため吸収率が皮下組織に依存する。インスリン使用者の皮下には特殊な「腫瘤:インスリンボール」が形成され、その量的・特性により薬効が変化する。しかし見えない皮下組織を精緻に描出する方法が無い。我々は腹壁全体にわたり微小音響圧を利用した超音波装置(acoustic radiation force impulse: ARFI)で皮下組織の「3次元-地図」を作製した。ARFIは音響圧を利用して軟部組織を微小変位させ、その変位量を超音波で位置測定することにより人が奥深い組織を直接触る仮想感覚で「硬さ」を計測、その硬度を定量化する方法である。 結果として 1)腹部皮下の3次元-地図を作製し高度腫瘤部位を定量可視化に成功。高度腫瘤部位の体積は、全腹壁体積の2.94 ± 3.21%であった。 2)腫瘤部と健常部の比較からインスリン吸収率は低下(80.3 ± 31.4 vs. 119 ± 34.2 h*mU/L)していた。また、腫瘤部位からの蛋白分解酵素、アミロイド蛋白などを解析し特徴を解析。
皮膚直下の3次元地図を利用し安定したインスリン至適投与方法を確立することを目的にしており達成した。今まで「見えない」ことから均一だと想定されていた薬物投与部位が非常に変化に富んだ状態であることは想像されていた。しかし、可視化技術や組織学的特徴を評価した研究はなくその点からも本研究は独創性があると考えている。
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