研究課題/領域番号 |
17K01426
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
武尾 英哉 神奈川工科大学, 工学部, 教授 (90434414)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 網膜症 / 眼底画像 / 差分画像 / 黄斑部 / 点状出血 |
研究実績の概要 |
患者の初診時および経過観察時の2つの眼底画像を比較することで,網膜症の病状の程度を定量的に表現する手法の開発を行ってきた.2つの画像を比較する上で,画像の差分を計算するためには,まずは高精度な位置合わせが必要である.そこで,本研究では,血管等が交差するポイントを複数検出し,パターンマッチングで2つの画像の対応点を見つけ,複数の対応点ペアから最小二乗法によって画像の線形変換を行うためのアフィン係数を自動的にみつける方法を開発した.この係数によってアフィン変換をすれば高精度に画像の位置合わせができることがわかった.そして,位置合わせされた2つの画像の差分画像を作成し,差分画像の差分値の二乗の総和を計算することで病状の変化を表す定量値とした.シミュレーションにより,この定量値と視力変化との関係があることがわかった. さらに,臨床評価予定先の眼科医に複数回にわたってインタビューをした結果,眼の病状は黄斑部における損傷の影響に非常に強く,また眼内におけるさまざまな出血の程度が見え方や視力,病状に極めて大きいことがわかった. そこで,前記の差分画像およびそれに基づく定量値に加えて,黄斑部を中心とした各種の出血の程度に基づく定量化を試みた.具体的には,眼底画像から黄斑部を自動的に検出し,黄斑部の内部および周辺における点状出血の数をカウントした.ここで点状出血とは,単純点状出血,斑状出血,軟性白斑の3種類である.これらを眼底画像から自動的にカウントし,回帰分析を用いてひとつの定量値を算出した.その結果,回帰分析の係数を求めるために用いた眼底画像とは別の眼底画像のおいて,各種の点状出血の数から推定した視力は実際の患者の視力にほぼ近い値を算出できることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初,本システムによる診断支援情報として,①経時サブトラクションによる差分画像,②差分画像から算出される定量値(差分値の二乗の総和)と考え,それらの処理の高度化や検証を進めてきた. しかし,医師のインタビューにより,上記に加えて加えて,黄斑部周辺の各種点状出血の存在も病状に大きな影響を与えることが判明した.そこで,この観点を基に新規に,③黄斑部を重視した点状出血カウントによる病状の推定化を開発し,シミュレーションによりその有効性を確認した. このように,新たに3つめの医師への診断サポート情報の開発に成功した.このことは当初予期していなかったことである.臨床の現場に何度も出向き,複数の眼科医に何度も聞き取りを行ったことで判明した重要ポイントと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目になる今年度は,昨年度開発した診断支援情報を搭載した実験機(臨床評価機)を作成し,臨床の現場で使っていただき評価を得ることである. 処理部分の改良を進めるとともに,8月頃までには実験機を完成させ,来年2月末頃までの約6ヶ月間,2施設で臨床評価を実施する. 半年間使っていただいて,その評価を得て,問題点を抽出し,処理アルゴリズム改良のための課題を明確にする. なお,再来年度は,処理アルゴリズムの改良の開発と,その処理を搭載した2度目(半年間を予定)の臨床評価を実施する予定にある.
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