研究課題/領域番号 |
17K01427
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研究機関 | 桐蔭横浜大学 |
研究代表者 |
石河 睦生 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 講師(移行) (90451864)
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研究分担者 |
田原 麻梨江 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (60721884)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 超音波トランスデューサ / 高周波 / 圧電体 / 薄膜 / 厚膜 / 高出力 / 水熱合成法 |
研究実績の概要 |
本研究では新たに凹面型圧電性結晶膜を用いた超音波トランスデューサを試作し、水中において、レンズを用いずに集束された高周波強力超音波音場の形成を目指すものである。 近年では、局所的な洗浄を目的に超音波洗浄の高周波化が検討されている。現状では10 MHzを超えるようなものはあまり提案されていない。課題として、高周波において強力超音波の連続放射を可能とする超音波トランスデューサの作製は困難であることが挙げられる。そこで本研究グループはKNbO3;圧電性結晶膜を用いた高周波強力超音波トランスデューサの試作と特性評価を行った。その結果、20 MHzにおいて高い音圧の放射と、それによる音響放射圧の確認に成功した。概略を書きに示す。 凹面型に加工されたNb-SrTiO3基板をNC旋盤を用いて精密加工を施し基板表面に凹面を形成した。凹面部を研磨剤を使用して磨いき、その曲面に沿って水熱合成法によりKNbO3圧電結晶膜を製膜した。製膜後の凹面型KNbO3圧電性結晶膜と基板は超音波洗浄機を用いて分離させ、その後、KNbO3圧電性結晶膜の上部と下部にスパッタリング法を用いて金(Au)を製膜し、上部電極と下部電極とした。下部電極をコネクタの信号線に接続することで超音波トランスデューサを試作した。音響放射面側となる水と圧電性結晶膜の間には音響整合層は用いず、また、背面側には減衰材料は用いず中空構造となる簡易的な構造である。 試作した超音波トランスデューサの特性評価をした結果、凹面型の膜によりレンズを使用せずに集束させることに成功した。また集束距離は約1mm、共振周波数は約20MHzに確認できた。超音波送受信波形から強力超音波による波形ひずみが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では高周波用強力超音波トランスデューサの試作に、音響レンズを用いない凹面型の圧電薄膜および圧電厚膜を用いるよう計画し、実験を行ってきた。凹面型の圧電結晶膜を基板から分離させるプロセスの確立には実験条件等の見直しにより、プロセス開発時間が必要と考えられていたが、簡易に運動エネルギーを与えることで想定以上に再現性良く圧電結晶膜と基板の分離が行えたことから、実験用サンプルの試作が得られるようになった。実際に試作した超音波トランスデューサにより強力超音波による音響非線形現象も観測され出したが。定量的な実験による評価は技術的な課題が多いことから、こちらには想定以上に時間を有している。しかし、目視において現象は確認できていることから計画としては順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
液体中に強力超音波を照射すると、超音波による負圧の作用で真空の空洞が発生する。その瞬間に、液体に溶け込んでいる気体が真空の空洞に取り込まれバブルになる。さらに強力な超音波によりバブルは振動をはじめ、膨張、圧縮を繰り返すことでバブルサイズに変化が起こり、ある瞬間にこのバブルが圧壊する。この現象を音響キャビテーションという。収縮・圧壊時には、準断熱圧縮が行われるためバブル内の温度は数1000度以上に達する。このような作用によって化学結合を切断することによって、化学反応を誘起する。この現象を音響化学反応といい、この作用により水分子が分解し、活性酸素種が生成することが知られている。 本研究では試作した高周波用強力超音波トランスデューサを使用し、キャビテーションの発生とバブル圧壊の観測を化学的観測と、映像や音響的観測を合わせて行い、シミュレーション結果と比較し、出力特性の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、パワーアンプやオシロスコープの購入を予定していたが、途中で得られている実験結果から購入する装置のスペックを再考したほうが、今後の論文執筆のためのデータ取得として有用と考えられたため。
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