研究課題
心臓再同期療法(Cardiac resynchronization therapy: CRT)は重症心不全患者に対して極めて有効な治療法であるが,3割程度のnon-responder(治療無効患者)がいることが大きな問題点となっている。非観血的に評価可能な冠血管予備能(CFR)を評価することでnon-responderか予知可能かこれらの非観血的指標の経時的評価が治療効果のマーカーになるか,という仮説を検証した。CRTを植え込まれた114人の心不全患者から長期追跡から撤退した患者およびベースラインCFR測定ができなかった患者を除外した後、53人の適格患者を登録した。経胸壁心エコー検査によりCFRを非侵襲的に決定した。主要な有害な脳および心血管イベント(MACCE)の出現を予測するためのROC曲線に基づいて、CFRのカットオフ値を1.35に設定した。正確な追跡情報(平均873±498日)は、CFR高値を有する23人の患者(16人の女性;平均年齢、71±7.9歳)および11人のCFR低値を有する患者(5人の女性;平均年齢、回答者は73±7.6歳)で行われた。カプラン・マイヤー生存分析は、CFR低値群がCFR高値群よりもMACCEの有病率が高いことを証明した(ログランク、9.83; p=0.0021)。多変量解析は、CFR低値群がMACCEと関連していることを明らかにした(ハザード比4.88、95%信頼区間1.13-26.5、p=0.0329)。これらの結果は、CFRの評価がCRTに対するresponderの長期予後を予測することを示唆している。冠状動脈循環流の保存は、レスポンダーにおけるCRTへのより良い反応のためのメカニズムの1つの根底にあるかもしれない。本研究の成果は心臓再同期療法に適する患者を正確に選択することに繋がり,医療費削減にも大きく貢献できると考える。以上の研究をHeart Vessels.に2018 Nov 27.acceptされ、掲載予定である。
2: おおむね順調に進展している
順調に症例数が増えており、エントリーをさらに進めている。当院デバイス外来で確実にフォローアップされてる。すでに上記の英論文にacceptされている。両室ペースメーカー関連の演題で学会発表も行っている。
さらにエントリーを増やして同意書取得に努める。冠血流予備能のみならず血管内皮機能でも心臓再同期療法後のresponderの長期アウトカムが予測できるかを検討し論文投稿する予定を検討中である。さらにはresponderであるにもかかわらず脳心血管イベントを起こす患者群の特徴調査や予測の可能性検討をさらに調査してゆく。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Heart and Vessels
巻: 34 ページ: 763-770
10.1007/s00380-018-1308-0