研究課題/領域番号 |
17K01440
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
田村 俊世 早稲田大学, 次世代ロボット研究機構, 客員上級研究員 (10142259)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 血圧計 / カフレス / 光電脈波法(PPG) / 心電図(EEG) / 脈波伝搬時間(PWT) / 家庭内血圧 / ISO / レグラトリ―サイエンス |
研究実績の概要 |
昨年度に試作した機器を用いた機器の評価と実証実験を試みると同時に標準化についてISO国際Non Invasive Blood Pressure (NIBP)委員会と独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ相談を行った。機器については、1)機器の評価:心電図と光電脈波を用いて脈波伝搬時間を正確に測定するために。シミュレータを用いて精度検証を行った。2)実証実験 これまで基本としていたIEEE P1708-2014 の規格に代わり、最も普及しているISO81060-2-2018 に沿ったプロトコールで精度検証を試みた。方法は同側の上腕にカフを装着し、カフレス血圧計の測定部位である、指を電極に接触した状態で、カフレス連続血圧値30秒の平均値、カフ型血圧計の収縮期・拡張期血圧を測定し、この組み合わせを3回繰り返し、平均値を校正値とした。校正値測定後、1時間後にカフレス血圧値とカフ型血圧値を比較して精度を算出した。被験者12名で、安静状態では精度5±8 mmHg 以下を満たした。また、長期間の安定性については、被験者6名、3か月の連続測定結果では、校正なしで精度を保つことが確認できた。カフレス血圧計は、間欠測定で長期間測定可能な血圧計を目標としているので、精度は確保された。 国際規格化については、ISO81060-3とIEEE P1708の議論に参加し、審議結果を比較検討した。国際NIBP委員会(JWG7)では、カフレス血圧計の規格については、別途審議することも考慮にいれているが、前途は不明であり、引き続き動向を注視する必要がある。一方、IEEEではP1708-2014のFDAでの認証を考えている。対象者を45から85に変更する、測定を心臓の高さに一致させるなどの変更を加え、FDAの認証を得るべく動いている。この2つの規格からカフレス血圧計の規格の骨子を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床利用に耐えうる機器を試作し、データ取得から保存、データ解釈まで行うことができ、機器のハードウェア、ソフトウェアがほぼ完成した。さらにデータをクラウドで保存することにより測定者本人と家庭医の検索が可能とするシステムを構築できた。しかし、機器の認証を考えるために少なくともISO81060-2のカフを用いた非侵襲自動血圧計の精度検証プロトコールに沿った精度検証に変更することとした。対象数は45名から85名に変更したことにより、聴診経験がある医療従事者2名の観測者を含めて、2018年度内に必要対象数を確保することができなかった。精度検証に2019年度1/4半期を必要とする。解析については、既に評価法を確立しているので問題はない。 規格については、非侵襲血圧計(ISO81060-3) の臨床評価について議論が始まっており、その内容を把握した。また、IEEE P1708-2014 ウェアラブルカフレス 血圧装置の機器認証プロトコールについは改訂も開始され、その動向にも引き続き注視し、カフレス血圧計の標準化の骨子を作成した。循環内科学的には、精度、動的変動、血圧降下時の血圧値評価についての妥当性を証明できていないが、カフレス血圧計は特定検診領域の血圧測定やスクリーニング目的に大きな効果があると考えられ、カフレス血圧計の標準化は有意義であると考える。 よって、科学研究費の2年目の計画は、おおむね順調に遂行している、
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、機器の長期間安定性を実証実験で明らかにし、家庭用血圧測定機器として約1か月校正なしで精度を保つことができるように試作器の精度特性を向上させる。さらに、実際の臨床での精度を実証実験で検証する。降圧剤を使用している高血圧患者に対して詩作器の性能を実証する。すなわち、カフレス血圧計の利用環境として、家庭での間欠(朝晩)かつ長期間(ほぼ毎日の測定で約1か月)校正なしでの使用を可能にしていく。また、循環器内科以外で連続血圧測定を望む歯科麻酔医の要望に沿う形で、カテーテル検査時のbeat-by-beatの血圧値を測定し、カフレス血圧計の血圧値と比較することも考えている。そして、機器としての全体システムの完成をめざす。すなわち、ハードウェアでは容易かつ高い信頼性で心電図と脈波信号取得する。ソフトウェアでは、取得したデータのセキュリティを考慮した転送法を確立してクラウドに転送する。クラウドで、対象者別のデータベースとして保存し、本人はいうまでもなく家庭医の閲覧も可能とする。 試作器ではハードウェア側で血圧値を計算するμプロセッサ内蔵型であったが、将来の医療機器として認証を考慮してクラウド側で血圧推定値の計算ならびに血圧値の表示をすることを検討していく。この場合、例えばスマートフォンに内蔵したカメラで脈波を測定し、スマートフォンの枠に電極を装着し、心電図波形を得ることにより、ソフトウェア認証のみでカフレス血圧計の医療認証が可能かを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費について、某メーカーよりパーツならびに機器の提供を受けたことにより、支出がなかった。最終年度は、機器の改良のためのパーツの購入、基板作製などに使用する。
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