研究課題/領域番号 |
17K01443
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
三浦 巧 国立医薬品食品衛生研究所, 再生・細胞医療製品部, 室長 (60405355)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヒト多能性幹細胞 / ゲノム不安定性 / 品質評価 / レギュラトリーサイエンス / 再生医療 |
研究実績の概要 |
現在、ES細胞やiPS細胞と言ったヒト多能性幹細胞は、再生医療・細胞治療のための原材料として使用されており、これらヒト多能性幹細胞由来の細胞をヒトに投与する際には、安全性上の「明らかな懸念」がないかを厳密に確認する必要がある。最も配慮すべき安全性上の懸念事項は、移植された細胞の中にがん細胞になる細胞が含まれていないことを明確することである。そこで本研究では、ヒト多能性幹細胞由来細胞の腫瘍形成とゲノム変化との関連性について明らかにすることを目指す。体外で培養される細胞は、継続的な培養や分化誘導などの人工的な刺激により、ゲノム変化(染色体喪失、交叉・転座・欠失等の染色体再編、点突然変異)がもたらされることが知られていることから、今年度は、培養中においてゲノム変化が起こりやすいモデル細胞の樹立を試みた。 ゲノム編集技術を用いて、DNAミスマッチ修復(Mismatch Repair:MMR)遺伝子であるMLH1,MSH2,MSH6などの遺伝子の標的破壊(ノックアウト)を試みた。その結果、標的遺伝子のエクソン領域において、塩基欠損の導入、または、挿入変異の導入をもつ細胞株を取得することができ、標的遺伝子のタンパク質の機能が破綻していると予想された。また、ヌクレオチド除去修復(Nucleotide Excision Repair:NER)機構に異常をもつiPS細胞においても増殖速度について検討を行ったところ、正常なiPS細胞との顕著な差は認められなかった。今後は、これらDNA修復機構が破綻した細胞株が、培養中におけるゲノム変化が起こりやすいモデル細胞として有用であるかについて解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、「増殖優位性に関与するゲノム変異の解析」を主な研究計画として掲げ、ゲノム変化が起こりやすいと予想されるモデル細胞を取得することができたことから、当初の計画を概ね遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、ゲノム変化が起こりやすいと予想されるモデル細胞を取得することができたことから、今後は、これら細胞株についての特性解析、および、様々な培養環境化で培養した場合に起こりうるゲノム異常に関しての詳細な変異解析を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究資材の調達方法の工夫などにより、当初の計画より経費の節約ができたため。また、残金分は消耗品費及び旅費の一部として使用する。
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