研究課題/領域番号 |
17K01446
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
遠藤 佳子 東北大学, 大学病院, 言語聴覚士 (60569466)
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研究分担者 |
橋本 竜作 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 教授 (00411372)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 純粋失読 / 語性失読 / 語彙判断 / 言語訓練 |
研究実績の概要 |
脳損傷後に、文字を読むことのみに特異的な障害を呈する病態は「純粋失読」と呼ばれている。純粋失読例は文字を書くことには障害を示さないため、書き取り (検者の指示通りに書く)でも、自発書字(症例自身が思った通りに書く)でも、何ら困難なく単語や文章を書き出すことが可能である。しかし、たとえ直前に 書 いた文字であっても読むことができない。この「書けるけど読めない」ことが純粋失読の最大の特徴である。現在、純粋失読には「字性失読」と「語性失読」 の2タイプが提唱されている。「字性失読」では1文字を読むことにも困難を呈し、「語性失読」では1文字は読めるが、複数文字を読むことに困難を呈する。 本 研究の目的は、「語性失読」について1)複数文字が読めない障害の発現機序を明らかにすること、2)「語性失読」を呈する症例に対する、有効な訓練教 材・手 技を開発すること、3)その訓練教材・手技の有効性を検証すること、の3点である。 「語性失読」は、1文字づつを個別に提示されれば容易に音読できるのに、 複数の文字を提示されると、それを流暢に読み繋いでいくことができない。この症状 は、欧米圏では以前から報告されていたが、日本では認知度が低い。それ ゆえ、「語性失読」の障害機序を明らかにし、それに合わせた訓練手技の開発が必要で ある。 本研究を通じて、「語性失読」の障害機序と責任病巣、またそれ らを踏まえた訓練手技の検討、訓練効果に関する知見が得られる。本研究で検討する失語症訓練 は言語聴覚士が施行できるものであり、失語症臨床に速やかに 普及するであろう。また本研究から得られた成果は脳内文字処理機構の追求にも尽力できるもので あり、認知神経科学の分野への貢献も期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、「語性失読」を呈する症例の読字の特徴を詳細に検討し、この症状を呈する症例に訓練教材を作成することを目標としていたが、感染拡大によりこのような症例を当院や関連機関に招いて訓練を実施することが困難であった。一方で、過去に経験した症例の脳MRI画像について、画像を分析し病巣部位を検討することは可能だった。純粋失読を呈するとされる病巣は広く、「語性失読」を呈する病巣部位が特定できれば、訓練が適応できる患者を特定することが可能となり有益であると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
感染拡大のため制限されていた人やものの移動が制限されなくなったことから、今後は、語性失読を有する患者に対して積極的に検査、訓練を行い、その特徴を明らかにしたい。また今年度得た責任病巣に関する知見と症例の脳画像とを照らし合わせ、訓練が有効な症例の責任病巣を明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大のため、被験者に十分な検査、検討を行うことができなかった。
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