研究課題/領域番号 |
17K01449
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
五味 暁憲 群馬大学, 大学院医学系研究科, 医員 (10325798)
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研究分担者 |
横尾 聡 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00322206)
神戸 智幸 群馬大学, 医学部, 非常勤講師 (90649493)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 構音障害 / 嚥下障害 / 鼻咽腔閉鎖機能 / 開鼻声値 / 鼻咽腔閉鎖圧 |
研究実績の概要 |
嚥下障害,構音障害のリハビリテーションにおける鼻咽腔閉鎖機能の評価は重要である。その評価方法として,これまで構音検査,鼻咽腔内視鏡検査,ビデオX線造影(VF)などが採用されてきた。しかし,構音検査,画像検査は評価者の感覚的(聴覚的,視覚的)判定に依存し,主観性が否定できない。研究者らは,開鼻声値(NS)測定による評価に着目し,NSを用いた客観的評価について研究を行ってきた。 鼻咽腔閉鎖の動態を観察する鼻咽腔内視鏡は,視覚的に捉えやすいものの定量化が困難である。そこで数値に表現できる評価法として鼻咽腔閉鎖圧に着目した。NSと鼻咽腔閉鎖圧(以下,VPと記す)の相関が見出せれば,これまで定量化できなかった鼻咽腔動態を,NSを用いて表現できると考えた。 本研究は,構音障害,嚥下障害の原因となる鼻咽腔閉鎖不全を簡便かつ客観的に評価できるようにすることを目標に,健常者の鼻咽腔閉鎖機能を開鼻声値 (nasalance score,NS)および鼻咽腔閉鎖圧(velopharyngeal pressure,VP)を計測してNSとVPの相関性を捉え,評価基準値を設定することを目指すものである。NSとVPの相関性を利用し,患者のNS測定によりVPが換算できるようになることで,鼻咽腔閉鎖不全による構音障害の評価のみならず,嚥下障害で問題となる VPの評価も同時に行うことができると考えている。 方法は,NS測定においては,ナゾメーターを用いて,サンプル音を発話した際のNSを計測する。VP測定においては,圧センサーが先端についた鼻咽腔内視鏡を挿入し,測定位置を確認した後,サンプル音・文章発話時と水3ml嚥下時のVPを計測する。NSとVPのデータから,双方の相関性の有無を統計学的手法を用いて分析する。相関が明らかになれば,NSからVPが予測できると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究には,開鼻声値を計測するナゾメーターと,鼻咽腔閉鎖圧を計測する装置が必要である。ナゾメーターは既存のものを使用する準備が整っている。 鼻咽腔閉鎖圧を測定する機器として,食道内圧などを測定するセンサーカテーテルを購入する計画であったが,予算内での購入が困難であり,採用を断念せざるを得ず,代替案となる方法を模索していた。新たな鼻咽腔閉鎖圧測定法として,鼻咽腔内視鏡に直接圧センサーを付けて計測することを考案した。圧計測機能を有する内視鏡は市販されていないため,汎用されている鼻咽腔内視鏡をアレンジして研究に用いることにした。内視鏡の先端に極薄の圧センサーを装着することとした。鼻咽腔内視鏡は購入済みであるが,新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,業者との打ち合わせが進まず,またセンサーの部品調達にも影響し,研究の進行が遅延させた。センサーの見直しを改めて行い,準備に至ったため,今後研究の進行が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
鼻咽腔閉鎖圧を計測する圧センサー付き鼻咽腔内視鏡が使用できるようになることで,研究計画が進められると考えている。今後被験者を募集し,十分説明の上,協力してもらう予定である。 開鼻声値測定は非侵襲で計測手技も容易である一方,鼻咽腔閉鎖圧測定は鼻腔から内視鏡を挿入する操作があり,内視鏡挿入による違和感や鼻腔粘膜との接触による鼻出血の可能性などに留意する必要がある。そのため,被験者には十分な説明を行い,有害事象が起こったときの対処法を準備する必要があるとともに,被験者の選定には出血傾向のある患者や鼻疾患の患者の除外を行う必要があり,その点についても注意する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大により,機器の準備が遅れ,それに伴う調査の遅延も生じたため,調査に用いる研究費の使用が少なかった。また,研究成果の誌上発表が遅れ,投稿費などに用いる研究費の使用が未定であることも挙げられる。さらに,学会への参加が現地に赴くのではなく,Webでの参加に変更したものがあり,交通費,宿泊費に費やす研究費が少額となった。
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