研究課題/領域番号 |
17K01462
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
室谷 嘉一 東北医科薬科大学, 医学部, 准教授 (70754943)
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研究分担者 |
伊藤 修 東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (00361072)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 糖尿病腎症 / 急性腎障害 / 虚血再灌流障害 / 腎内血流 / 腎内炎症 |
研究実績の概要 |
今年度は、(1)糖尿病による急性腎障害(Acute Kidney Injury: AKI)に対する疾患感受性亢進の機序解明と(2)AKI後の慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)進展の機序解明を中心に研究し、その成果を学術集会で発表し、(1)に関する論文発表を行なった。今年度の補助金も、主に上記の研究を遂行するための実験器具購入費に当てられた。糖尿病(DM)は臨床現場で急性腎障害(AKI)を発症する主要な危険因子であり、腎虚血再灌流(IR)傷害はAKIの最も頻度の高い原因である。また、虚血性障害に対して糖尿病腎症により感受性が亢進することが、ヒトおよび実験動物において報告されている。しかし、その感受性亢進の機序は未だ不明である。我々は 最近、再灌流後の腎髄質血流(MBF)の二次的な低下が感受性亢進を引き起こすことを発見し、自然発症糖尿病ラットにおいてもIRに続くMBFの検討を行なった。仮説通り、感受性の亢進しているT2DNラットにおいて、MBFの二次的な低下が観察された。また、感受性の更新しているラットにおいて、その腎内の炎症程度が障害程度に相関していることを見出した。これらの結果より、糖尿病腎症において、腎内炎症の存在がMBFを維持する能力を障害し腎臓のIRへの感受性を亢進させる一因であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は、生理学的及び分子生物学的手法を用いた腎臓リハビリテーション研究の第一人者である東北医科薬科大学リハビリテーション学の伊藤修教授と、チトクロームP450依存性アロキドン酸代謝産物の20-HETEに関する研究および急性腎障害における腎髄質研究の第一人者である米国ミシシッピ大学医療セン ターのRichard J. Roman主任教授と協働し研究を進めている。また、2018年に東北医科薬科大学医学部教育研究棟動物実験センターが完成し、研究環境もさらに充実した。動物の処置(実験モデル作成、腎臓内血流測定、薬物投与、長期的運動)も容易になり、さらに研究を推し進められる環境にある。(2)AKI後の慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)進展の機序解明に関して、重要な知見が得られたことより現在一つ目の論文を作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、本研究は東北医科薬科大学動物実験センター、および米国ミシシッピ大学医療センターにおいて実施する。当該分野は、実験室、動物飼育室、ならびに 長期的運動を行うトレッドミル装置、小動物実験用簡易吸入麻酔装置、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS/MS)、血流測定機器、ウエスタンブロット法や ELISA法のための各種装置など実験を行うにあたっての必要な設備・機材をすでに有している。今後は、AKI後の慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD) 進展の機序解明に関して研究をさらに進める予定である。
急性腎障害(AKI) 発症後の慢性腎臓病(CKD)への移行危険因子として、高齢、糖尿病(DM)、高血圧、心不全、Charlson併存疾患指数、低アルブミン血症などが 指摘されている。DM腎症は虚血に起因するAKIへの疾患感受性が高いとされているが、その障害進展機序や感受性に関わる因子は明らかではない。また、AKI寛解後もその既往はCKD増悪に深く関わるとされるがその機序も不明であり、検討ができる動物モデルも知られていない。本研究では自然発症2型DM腎症(T2DN)ラッ トを用い、虚血性AKIに対する疾患感受性に関わる因子とAKI後のCKD増悪に関する検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
東北医科薬科大学リハビリテーショ ン学の伊藤修教授、および同学内関連教室との研究強力体制が確立され、実験に必要な消耗品等に対して予定していたほどの出費が必要ではなかった。また、所属施設から学会発表や論文掲載費等への補助もあった。東北医科薬科大学動物実験センターが本格始動し、また実験へのエフォートも十分確保できるようになったため今後は計画通りに研究ができる予定である。
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