研究課題/領域番号 |
17K01464
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
加藤 宏之 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (60224531)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脳卒中 / リハビリテーション / トラクトグラフィー |
研究実績の概要 |
本研究では、脳の運動ネットワークの主たる構成員である錐体路(皮質脊髄路)の損傷の程度に焦点を当て、脳梗塞患者における錐体路の損傷の程度を拡散テンソル・イメージングによるトラクトグラフィーを用いて評価し、脳梗塞後の片麻痺の予後の推察の指標となるか否かを検討した。 今回われわれは、皮質下(内包、基底核、放線冠)の急性期脳梗塞で入院した患者を用い、発症3-11日後に脳MRI検査と錐体路のトラクトグラフィー検査を行ない、病巣と錐体路の空間的位置関係、および、片麻痺の程度との関連性を検討した。 患者は42-94歳で、女性10例、男性16例、左片麻痺14例、右片麻痺12例で、片麻痺の程度は、高度4例、中等度2例、軽度20例であった。 トラクトグラフィーで描出される錐体路と梗塞巣の位置関係は以下の通りであった。高度片麻痺例では、4例全例で錐体路が梗塞巣を貫通していた。中等度片麻痺例では、錐体路が梗塞巣を貫通が1例、梗塞巣に部分的に含まれるのが1例であった。軽度片麻痺例では、錐体路が梗塞巣に部分的に含まれるのが9例、梗塞巣に接するのが9例、梗塞巣と離れるのが2例であった。 以上より、高度片麻痺では全例で錐体路は梗塞巣を完全に貫通していたが、一方で、錐体路のかなりの部分が梗塞巣に含まれていても片麻痺の程度が軽度の症例も少なくなかった。片麻痺の程度は、錐体路が梗塞巣にどれだけ含まれるかと、梗塞巣の障害がどれだけ強いかの2つの要素が関連すると示唆される。今後、症例を増やして、さらに検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
トラクトグラフィー解析は問題なく行われているが、症例の集積が想定よりも遅れている。 脳梗塞症例の片麻痺の程度を、軽度、中等度、高度に分類して検討しているが、現在の症例数が、軽度20例、中等度2例、高度4例であるため、症例の偏りが見られている。現状でも、予想された作業仮説を支持する結果が得られているが、さらなる症例の蓄積が得られれば、より説得力の高い結論に至ると考えられる。 脳卒中急性期の患者のデータ解析は、今回、研究実績の概要として報告したように、脳卒中後の片麻痺の程度は、錐体路が梗塞巣にどれだけ含まれるかと、梗塞巣の障害がどれだけ強いかの2つの要素が関連すると示唆されるという、方向性は見えている。今後、症例数をさらに増やして、結論をさらに強固なものにしていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り、脳卒中後の片麻痺を有する患者のトラクトグラフィー検査を継続して収集し、データの蓄積に努める。 脳卒中急性期の患者のデータ集積は順調に進んでいるが、片麻痺が中等度~高度の患者数が、軽症の症例に比して少ないので、今後、さらなるデータの集積に努め、結論を強固なものとしたい。 脳卒中慢性期の患者データに関しては、症例の集積が十分ではないので、研究実績の概要として報告するには至っていないが、今後、一定のデータの集積が得られれば、追加の所見として、しっかりした結論に至りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の、現在までの進捗状況はやや遅れている。 そのため、研究費の使用が想定より遅れている。次年度に、さらなる症例数の追加が必要なため、研究費を次年度に回す必要がある。 また、研究の総括とまとめ、論文化と研究発表などが次年度に移行するため、その費用が次年度に移ることとなった。
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