研究課題/領域番号 |
17K01469
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
辻 哲也 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (90245639)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リンパ浮腫 / 運動療法 / 婦人科がん / QOL / がんリハビリテーション / 複合的理学療法 / 日常生活動作(ADL) |
研究実績の概要 |
リンパ浮腫はがん治療後に発症する後遺症で難治性である。リンパ浮腫の治療として、複合的理学療法(Complex physical therapy:CPT)が標準治療として推奨されている。しかし、下肢リンパ浮腫に対する運動療法の効果についてエビデンスは確立されていない。 本研究の目的は、下肢リンパ浮腫に対する圧迫下運動療法の即時効果を検証し、リンパ浮腫を改善するのに最適な運動様式・運動強度の指針を確立することである。 研究デザインはブロックランダム化クロスオーバー比較試験。対象は、慶應義塾大学病院を受診した下肢続発性リンパ浮腫患者とした。介入群として圧迫下運動療法(座位15分)および圧迫下運動療法(臥位15分)、対照群として圧迫療法のみ(臥位で両下肢拳上15分)の3種類を別々の日に分けて実施した(wash out期間は1週間以上)。圧迫下運動療法には、てらすエルゴⅡ(昭和電機株式会社製)を用いた。 主要評価項目は下肢体積とし、測定には赤外線を利用した体積測定機器Perometer Type 1000M(Pero-System社製、ドイツ)を使用した。副次評価項目は、痛み、重だるさ、浮腫徴候(皮膚硬度・圧痕)とした。痛み・主だるさは、Visual Analog Scaleで評価し、浮腫徴候は3段階の定性評価を用いた。 必要なサンプル数として想定した各群:18名、3群合計:のべ54名の症例登録が終了し、各々の各介入前後に評価を実施し、一部データの解析も実施した。 今後、データの解析を進め、各介入前後の即時効果を検証するとともに、下肢体積の変化量・変化率と浮腫徴候(皮膚硬度・圧痕)、自覚症状(痛み・重だるさ)および背景因子(基本属性、医療情報)との関係を分析し、研究結果をもとに、リンパ浮腫を改善させるための最適な運動様式・運動強度の指針を構築する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象患者のエントリーは滞りなく予定どおり終了した。対象患者に対する介入(圧迫下運動療法(座位15分)、圧迫下運動療法(臥位15分)、圧迫療法のみ)および介入前後の評価はともに順調に完遂できた。対象患者の基本情報や医療情報は診療記録から、データ収集を行い、データの解析作業も一部開始した。 また、研究実施にあたって、国内での同分野での研究実施状況の視察および意見交換のため、第23回日本緩和医療学会学術大会・第2回秋期日本リハビリテーション医学会学術集会・第8回日本がんリハビリテーション研究会へ参加した。 以上から、予定された平成30年度の計画どおりに研究は進行したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成31年度(令和1年度)には、臥位および座位での圧迫下での運動の即時効果を検証するために、結果の解析を継続して実施する予定である。主要評価項目として下肢体積、副次評価項目として浮腫徴候(皮膚硬度・圧痕)、自覚症状(痛み・重だるさ)を3種類の各介入前後に評価し、各介入の即時効果を検証する。統計解析は3介入群間、3期間の比較に線型混合モデルを用いてクロスオーバー分散分析を実施する。下肢体積の変化量・変化率と自覚症状(痛み・重だるさ)、浮腫徴候(皮膚硬度・圧痕)、体組成(インピーダンス値等)および背景因子(基本属性、医療情報)との関係を分析する。いずれの統計解析も、有意水準は5%とする(IBM SPSS Statistics 23)。 研究結果をもとに、過去の文献やガイドラインも参考にして、リンパ浮腫を改善させるための最適な運動様式・運動強度の指針を構築する。 研究の成果は、リハビリテーション医学、癌治療に関する国内・国際学会で発表するとともに、原著論文として成果をまとめ、リハビリテーション医学または癌治療に関わる国際誌に投稿し、研究成果を世界へ発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成30年度未使用額(106,107円)の発生は、学会参加のための旅費や英文校正費が想定していた金額よりも安価であったこと、および効率的な物品調達を行った結果である。 (使用計画) 研究成果の発表のための英文校正費、国内外の学会参加のための旅費等に充てる予定である。
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