研究課題
リンパ浮腫はがん治療後の後遺症で難治性である。複合的理学療法が標準治療として推奨されているが、運動療法の効果についてのエビデンスは確立されていない。本研究の目的は、下肢リンパ浮腫に対する圧迫下運動療法の即時効果を検証し、最適な運動様式・運動強度の指針を確立することである。研究デザインはブロックランダム化クロスオーバー比較試験。対象は慶應大学病院を受診した下肢続発性リンパ浮腫患者とした。介入はA)圧迫下運動療法(座位15分)、B)圧迫下運動療法(臥位15分)、C)圧迫療法のみ(臥位で両下肢拳上15分)の3種類を3日に分けて実施した。圧迫療法には多層包帯法、運動療法には自転車エルゴメータ(てらすエルゴⅡ、昭和電機株式会社)を使用した。主要評価項目として下肢体積量、副次評価項目として皮膚硬度・圧痕・痛み・重だるさを各介入前後に評価し、即時効果を検証した。また、体組成計によりインピーダンス値、BMI、体脂肪率を測定した。統計解析として線型混合モデルによるクロスオーバー分散分析を実施した。結果、18名がエントリーし全員が介入を完遂した。体積減少率は、介入A)1.19±1.32%、B)2.03±1.24%、C)0.99±0.83%であり、介入群間で有意差を認めた(p=0.011)。介入B)とC)との平均値の差に有意差を認めた(p=0.014)。一方、実施時期に有意差を認めず、介入と時期との交互作用も認めなかった。研究結果から、圧迫下運動療法として臥位でエルゴメータを使用してペダル駆動を低負荷で行うことにより、より大きな下肢体積量減少の即時効果があることが明らかとなった。最適な運動様式・運動強度としては、座位よりも臥位で、弾性着衣による圧迫下で15分程度の軽い運動負荷が最も効果的であることが示された。この成果を今後リンパ浮腫治療ガイドラインにも反映させる予定である。
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