研究実績の概要 |
本研究は、健常高齢者を対象にSMR波(12-15Hz)の振幅を強化、θ波の振幅を抑制するニューロフィードバックが認知機能に及ぼす効果を検討した。1回20分のトレーニングを計10セッション実施した。また、ニューロフィードバックによる介入の前後で、①簡易型認知機能検査(MMSE)、②「ワーキングメモリ」、「実行機能」、「注意」、「エピソード記憶」を測定する認知テストバッテリーをおこない、その得点を比較した。ウィルコクソンの順位和検定の結果、θ波とSMR波の比率が有意に減少することが示された。また、ワーキングメモリの得点増加に有意傾向が示された。次に、参加者ごとの結果を検討するた めに信頼変化指標(Reliable change index; RCI)を算出した(Jacobson & Traux,1991)。その結果、θ波およびθ波とSMR波の比率が有意に減少すること、また、ワーキングメモリの得点が有意に増加することが示された。これらの結果は、θ波の抑制がワーキングメモリの向上に寄与する可能性を示唆するものである。しかしその一方で、本研究ではCovid-19の影響により、当初予定していた参加者数を集めることができなかっため、結果の解釈には限界がある。今後は健常高齢者に加えて、認知症発症のリスクが高いMCI高齢者や認知症患者を対象にニューロフィードバックを実施することでその一般性の確立を目指す。
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