研究課題/領域番号 |
17K01480
|
研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
大石 如香 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 准教授 (10738636)
|
研究分担者 |
鈴木 匡子 東北大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20271934)
今村 徹 新潟医療福祉大学, 大学院保健学専攻言語聴覚学分野, 教授 (20339972)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 質感 / 視覚性認知 / 認知症 / 素材同定 / レビー小体型認知症 / アルツハイマー型認知症 |
研究実績の概要 |
認知症患者において「視覚認知障害」は,初期の段階で起こることが報告されており,その進行とともに日常生活に支障が生じることが知られている.認知症患者では傷んだ食品を食べたり,消しゴムや石鹸などを食べ物と誤認して口に入れてしまう異食がみられることがあり,その背景に,対象の形や質感を認知できない視覚認知障害がある可能性が示唆される.そこで,今年度は小松英夫氏(生理研)が作成した質感の画像刺激をご提供いただいて,質感認知課題を作成し,認知症患者を対象に施行した. 【対象】変性性認知症患者78名(アルツハイマー型認知症53名,レビー小体型認知症25名).健常対照群32名. 【方法】視覚性の素材同定課題を実物と画像の2種類で実施した実物の素材同定課題では,刺激として円柱状の素材6種類(樹皮,布,皮革,陶器,ガラス,金属)を各3個,合計18個用意した.画像の素材同定課題では刺激としてCGで作成した画像刺激6種類(樹皮,布,皮革,陶器,ガラス,金属)各3個を用いた.刺激を1つずつ10秒間呈示し,6つの素材が書かれたカードから該当する素材名を1つ選ぶように指示した.他に標準的な神経心理学検査を施行した. 【結果】アルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症では,正常コントロール群に比べて,素材同定課題の成績が有意に低下しており,レビー小体型認知症でより不良であった.基本的視知覚機能として,アルツハイマー型認知症ではコントラスト感度,レビー小体型認知症では視力,色覚,コントラスト感度が低下していたものの,素材同定の成績と基本的視知覚機能との相関はなかった. 【考察】アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症では,視覚性質感認知が病初期から障害され,特にレビー小体型認知症で顕著であることが明らかになった.また,視覚性質感認知は,基本的視知覚機能とは独立して障害されることが示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
幅広く対象患者を集める体制はすでに確立されている.視覚性物体認知に影響する要因を検討するための,新たな神経心理学検査の開発も順調に進んでおり,すでに患者群への試行を開始している.次年度さらに研究を進める準備が整っている.
|
今後の研究の推進方策 |
アルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症患者について,その質感認知障害について検討していくとともに,物体認知における視覚性質感認知と視点の影響について更に探っていく.今後,健常高齢者を含め対象者を募り,質感認知および物体認知に影響する要因について検討を進める.以上を統合して,アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症ではその視覚認知障害に質的な差異があるのか,具体的にどのような「視覚認知障害」と「質感認知障害」が関連しているのかを明らかにしていく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画より研究が順調に進んだため,検査開発費や検査データ収集のための旅費を使用する必要が生じたため
|