研究課題/領域番号 |
17K01482
|
研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
熊田 竜郎 常葉大学, 保健医療学部, 教授 (00402339)
|
研究分担者 |
梅村 和夫 浜松医科大学, 医学部, 教授 (40232912)
吉川 輝 昭和大学, 医学部, 助教 (90737355)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 脳梗塞 / リハビリテーション / オリゴデンドロサイト |
研究実績の概要 |
本研究者らは独自に確立した運動皮質梗塞モデル動物を用いて、脳梗塞後の運動機能の回復と神経系の再構築におけるリハビリテーションの役割について調べている。中枢神経系で髄鞘を形成するオリゴデンドロサイトは、成体では発生期と異なる特定の幹細胞から生じるため、その産生や分化も制限される可能性が示唆されている。脳梗塞後には髄鞘を持つ有髄神経にも損傷を起こすが、その後の機能回復と髄鞘再形成の関係性については良く分かっていない。そこで、本研究課題では成体ラットの脳梗塞後の運動療法がオリゴデンドロサイトの新生や分化に及ぼす影響を急性期から慢性期ににかけて検討し、運動機能の回復との関係性について明らかにすることを目的としている。 本年度は脳梗塞後の運動負荷が新生オリゴデンドロサイトの産生にどのような影響を与えるかどうかについて、BrdU標識法とオリゴデンドロサイトのマーカー分子(NG2, Olig2等)の2重免疫組織染色法により調べた。脳梗塞術後に2重陽性細胞数は増え、さらに運動負荷による影響も受けるようである。しかし、NG2は傷害後には異種の細胞も染める報告があり、今後より詳細な系譜解析が必要である。 また、回復により障害の度合いが軽減することが想定される慢性期の運動障害を高感度かつ正確に定量できる評価系の確立を目指した。実際には、市販のシステムに独自の撮像装置を組み入れた三次元動作分析法により脳梗塞モデル動物のトレッドミル走行中の動態を運動学的に解析している。昨年度は主に後肢の膝関節の動きに着目した。フットプリント法の結果と同様に運動皮質障害は一歩行周期中の歩幅・歩隔などのパラメータには影響を及ぼさなかった。しかしながら、両側の膝関節の軌跡と梗塞巣と反対側の膝間接の角速度に影響を及ぼすことが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脳梗塞後の新生オリゴデンドロサイトを同定し、その密度の変化を指標にリハビリテーションの影響を調べる予定であったが、予想以上に陽性細胞が多く、オリゴデンドロサイトの前駆細胞以外の細胞も染色されることが分かってきた。これらの細胞の詳細な系譜解析を行う必要が出てきたため遅れが出ている。またin vitro培養系についても経験者の助言に基づいて準備を進めているが、培養系の選択という問題から一連の分化のどの過程の機序を調べるかを具体的に決めてから実施する予定のため進んでいない。 一方、本研究課題のもう一つの重要事項である脳梗塞後の運動機能回復過程を長期的に感度高く評価することを目的とした三次元動作分析法については計画通り確立し、脳梗塞モデル動物の歩行運動の運動学に基づく定量化については進められた。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き脳梗塞後の各種運動処方とオリゴデンドロサイトの新生や分化との関係について調べる。運動処方と細胞系譜の関係性が明らかになった後、栄養代謝産物を中心に、薬剤のin vivo投与系やin vitro培養系により、関わる機序を解明していく。また、神経線維の標識法と免疫組織染色法により回復期・慢性期における障害を受けた神経路の回復過程と周囲の髄鞘の様子を調べる。 三次元動作分析法による運動評価においても、脳梗塞モデル動物の各間接位置の動態を引き続き解析し、各動作の運動異常の要因を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況に述べたように、脳梗塞術後の動物のオリゴデンドロサイトの系譜を調べるための基礎的な検討に時間を要した。また、機序解明のための培養系の確立には当初の予想以上の予算を要することが判明した。培養用紙薬など消耗品の有効期限などを考慮し、次年度の予算と合算して研究を推進することとした。
|