研究課題
我々は運動皮質梗塞モデル動物を用いて、脳梗塞後の運動機能の回復と神経系の再構築におけるリハビリテーションの役割について調べている。中枢神経系で髄鞘を形成するオリゴデンドロサイトは、成体では発生期と異なる特定の幹細胞から生じるため、その産生や分化も制限される可能性が示唆されている。一方、このオリゴデンドロサイトの新生とその後の髄鞘再形成が起こりえるステージは、脳の障害直後ではなく、慢性期の変化となる。本年度は、これまでの研究で実施できなかった慢性期の変化について調べた。前回、運動機能の回復経過には術後2週間までの急性期での変化と1ヶ月の変化に違いがある事を見出し、運動処方の違いが急性期と慢性期の運動機能回復に対して異なる影響を与えることを報告した(Morishita et al., 2020, Brain Behavior)。今回、我々はこの回復経過の違いがどの程度継続されるのかについて検討した。その結果、少なくとも術後1年後においても、術後1ヶ月の運動障害の傾向を維持することを見出した。このことから、術後2週間から1ヶ月時の期間の間に影響を与える介入法の重要性が示唆された。一方、新生するオリゴデンドロサイトの前駆細胞をBrdU標識法により追跡することも試みたが、BrdUで標識されるオリゴデンドロサイト細胞は見出せておらず、長期間にわたり系譜解析をする方法には限界があった。今後、標識法を改めて追跡していく必要性が示唆された。
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