研究課題/領域番号 |
17K01485
|
研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
中谷 直史 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 助教 (00421264)
|
研究分担者 |
中井 滋 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (20345896)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 分子スクリーニング / ヒト骨格筋由来細胞 |
研究実績の概要 |
藤田保健衛生大学医学部整形外科との共同研究により得られたヒト骨格筋サンプルから、ヒト筋衛星細胞(CD56陽性細胞)、ヒト骨格筋由来間葉系幹細胞(PDGFRα陽性細胞)の単離、培養を行い、多数の患者由来の細胞株を得ることが出来た。得た細胞株について、CD56陽性細胞は筋管細胞への分化度、PDGFRα陽性細胞は脂肪細胞への分化度を確認し、細胞株ごとに特性を確認し保存を行っている。これらの細胞を用いて研究を進めている。 29年度はヒト血清を用いた筋形成抑制シグナルの検出系の確立を行った。筋形成を抑制する働きのある分子として、TGF-βスーパーファミリーに属する、マイオスタチン、TGF-β、アクチビンが報告されている。これらの分子は、細胞内の情報伝達分子として、Smad経路によりシグナル伝達を行う。このSmad経路の検出方法として、リン酸化Smad2/3に注目し、ヒト骨格筋由来筋芽細胞を分化させた筋管細胞にヒト血清を作用させSmadシグナルの検出をWesternBlot法により行うための検討を試みた。ヒト血清中に含まれる、筋形成抑制因子(マイオスタチン、TGF-β、アクチビン)は処理なしではシグナル応答性を示さず、WesternBlot法により検出することは出来なかった。そこで血清中の筋形成抑制因子の活性が上がるように、酸処理を行った所、血清刺激によるリン酸化Smad2/3の増加を確認することが出来た。また、筋形成抑制因子のSmadシグナルを、蛍光免疫染色法によっても検出するために、CanGetSignalをもちいることでSmad2/3のリン酸化の染色が可能になった。また平行して行っていたPDGFRα陽性細胞を用いた脂肪分化抑制剤の探索では薬剤を絞り込み、論文発表を行なった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
藤田保健衛生大学医学部整形外科との共同研究により得たヒト骨格筋サンプルから、ヒト筋衛星細胞(CD56陽性細胞)、ヒト骨格筋由来間葉系幹細胞(PDGFRα陽性細胞)の単離、培養を行い、多数の患者由来の細胞株を得ることが出来ている。得られた細胞は分化度の高いものもあり、筋管細胞の実験に用いる事が可能になった。ヒト骨格筋由来筋芽細胞の準備はほぼ整った。筋管細胞へ作用させる薬剤スクリーニングにもちいる化合物ライブラリーの選定をおこなった。まず未知の作用因子の探索を目標とし、生理活性物質ライブラリーを購入した。ヒト骨格筋由来筋芽細胞を筋管細胞へ分化させ、筋管細胞での薬剤評価を行うのが目的なので、予備検討を進めていたところ、非常に高い分化能を有した細胞株では筋管細胞が剥がれやすいという問題点が明らかになった。この問題に対して、筋管細胞への分化条件(分化期間)、染色方法などの最適化を行う必要があり、29年度に薬剤スクリーニングには至らなかった。しかし、分化誘導期間、染色条件を改良することで、筋管細胞が剥がれるという問題は解決された。新しく改良した条件で早急にスクリーニングを行う予定である。また、人工透析患者の血清検体を得るための準備を行い、サンプル条件や、サンプル採取施設等の準備をすすめている。
|
今後の研究の推進方策 |
ヒト骨格筋サンプルから、ヒト筋衛星細胞(CD56陽性細胞)、ヒト骨格筋由来間葉系幹細胞(PDGFRα陽性細胞)の単離、培養を行い、多数の患者由来の細胞株を得ることが出来、さらに細胞単離、培養、保存を続けているので、実験に用いる筋芽細胞はいつでも使える状態にある。スクリーニングにあたり、分化した筋管細胞が剥がれてしまうという問題が発生したが、29年に最適な条件を決めることが出来た。30年は本格的にスクリーニングを開始し、候補分子の絞り込みを行う。準備した生理活性ライブラリー以外に、FDA認可薬剤ライブラリーを用いての大規模スクリーニングも本年度中に行う予定である。本年度中に、In vitroでの実験を終了し、マウスへの投与を開始できるように進める予定である。In vivoの実験系(筋重量、筋線維面積、筋線維数の測定、筋再生実験)はこれまでの研究で確立しているため、候補分子の絞り込みが終われば速やかに開始できる状況にある。また、長期透析患者血清を用いたスクリーニングについても、サンプリングを行う関連施設と連携を取り、スクリーニングが開始できるように準備を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度の後半に開始予定であった動物実験が次年度にずれ込んだため、動物飼育用の飼料、床敷の購入を今年度行わなかったため次年度繰越金が発生してしまった。30年度は予定金額通り使用できるように計画を立てて物品購入を行う予定である。
|