前年度に引き続き、藤田医科大学医学部整形外科との共同研究により得られた、ヒト骨格筋組織から骨格筋由来のヒト筋衛星細胞(CD56陽性細胞)とヒト骨格筋由来間葉系前駆細胞の単離を行った。前年度に改良した、単離開始時の筋組織量を増加させた実験系を引き続き行い、両細胞を単離しそれらを用いて研究を進めた。 ①前年度に引き続き、ヒト骨格筋由来間葉系幹細胞を用いた筋肉内異所性骨化抑制因子探索スクリーニングにより候補分子となった分子の詳細な解析を進めた。候補分子は、濃度依存的にアリザリンレッド染色性の低下、ALP活性の低下が確認され、骨形成を抑制した。また、骨形成の強力なシグナル伝達経路であるSmad1/3/5のリン酸化を抑制していた。このことが骨形成抑制の一因であると考えられる。さらに候補分子の軟骨化への効果を調べるために、ヒト骨格筋由来間葉系前駆細胞を用いて、In vitroで軟骨分化誘導を行いアッセイを試みたところ、軟骨化は確認されたが、薬剤の効果を評価するほどの誘導は行えなかった。 ②並行してい進めていた別のライブラリーを用いたスクリーニングにより発見された分子の作用メカニズムについても解析を行った。組織学的解析から、薬剤による抗炎症効果を確認し、論文で発表を行うことが出来た。 ③長期透析患者の血清を採取し、血中クレアチニン値から筋量の概算を推測し、筋萎縮を生じている患者血清を特定した。今後この血清を用いて骨格筋萎縮誘導因子の探索を行う予定である。
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