研究課題/領域番号 |
17K01488
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研究機関 | 関西福祉科学大学 |
研究代表者 |
廣島 玲子 関西福祉科学大学, 保健医療学部, 准教授 (40404777)
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研究分担者 |
山路 純子 (田代純子) 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 准教授 (40340559)
森 禎章 関西福祉科学大学, 保健医療学部, 教授 (70268192)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 廃用性筋萎縮 / 回復過程 / 炎症反応 / ミオシン重鎖アイソフォーム / 炎症性サイトカイン / 熱ショックタンパク質70 / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
廃用性筋萎縮は一旦発症しても適切な負荷や刺激を与えると正常な筋に戻るという可逆性を持つため、リハビリテーション臨床現場では廃用性筋萎縮からの回復は重要課題である。廃用性筋萎縮を発症した筋は脆弱になり自己体重を負荷するだけで筋損傷が起こり、そこから炎症反応が惹起され、その後回復していくことが我々の先行研究で明らかになった。そこで本研究では、この損傷からの炎症が回復に及ぼす影響について筋細胞レベル、分子レベル、遺伝子レベルで詳細に分析し、また回復過程において様々なリハビリテーション治療法の効果やその効率について検討することを目的とした。 本研究ではWistar系雄ラットを使用して下肢にギプス固定を施しヒラメ筋に廃用性筋萎縮を発症させた。2週後ギプス固定を解放し、ラットは再びケージ内を自由に動くことができるようにした。このギプス解放直後に抗炎症剤をヒラメ筋に注射し、その後の炎症・回復の過程を3日後、7日後、14日後に実験群(抗炎症剤注射群)と対照群(注射なしで自然治癒群)で比較・検証した。実験指標としてミオシン重鎖アイソフォーム3種(MHC-Iβ, MHC-IIa, MHC-IIb)、炎症性サイトカイン3種(IL-6, IL-1, TNF-α)、熱ショックタンパク質70(HSP70)のmRNA遺伝子およびタンパク質レベルで発現量を分析した。 平成29~31年度は主に炎症実験(抗炎症剤投与)を行い、廃用性筋萎縮からの早期回復段階での炎症から回復へと導くメカニズム解明への足掛かりとする。後半の平成31~32年度は本結果を踏まえ、数種類のリハビリテーション治療法を介入しそれらの効果や効率性について比較・検討し、どのような治療方法が最も効果を示すのか、またいつからどの位の期間治療を実施するのが最適かなど本実験結果を臨床現場に提案する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実験精度を高めるべく実験手順の見直しや分子生物学的解析技術の詳細を再確認しながら、動物実験の準備を進めている。具体的には、先行研究で抗炎症剤としてデポ・メドロール水性懸濁注射液(ファイザー社)を使用してヒラメ筋に注入したが、活動の低下したラットヒラメ筋では懸濁液の吸収が遅く、筋摘出時に薬剤結晶が筋表面に残留いたままのものが見られたため、本実験では懸濁ではない水性薬剤を使用することと変更した。 また、先行研究ではラット右下肢のみにギプス固定を実施したが、ラットは体の他部分を使って動く、ギプスを齧るなどギプスから解放されようとするためギプスの巻き直しを頻繁に行わなければならなかった。ラットの動きをもう少し制限するため今後は両下肢をギプス固定し、左下肢の萎縮ヒラメ筋を組織染色して炎症程度を分析していく予定である。 また、mRNA分析のためのリアルタイムPCRで使用する特異的プライマーの再選択、タンパク質分析のためのwestern-blottingで使用する抗体の選別などを実施中である。先行研究ではこれらは反応の良いものと悪いものがあったため、他の文献などを参考にしながら本実験精度を高めていく。これらが決定次第、実際の実験動物を使用して炎症実験を開始する。
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今後の研究の推進方策 |
研究前半では主に炎症実験を行い、廃用性筋萎縮からの早期回復段階で起こる炎症から回復へと導くメカニズム解明への足掛かりとする予定である。具体的には、今までの実験での検討事案を考慮しながら、平成31年度には実験動物(Wistar系雄ラット)を使用して下肢ヒラメ筋をギプス固定し廃用性筋萎縮を発症させ、そこに抗炎症剤を注射し、その結果を本実験指標をもとに実験群と対照群を比較・検討する。 その後は、炎症実験結果を踏まえ、廃用性筋萎縮からの回復過程において数種類のリハビリテーション治療法を介入する。炎症実験結果より抗炎症剤の有無による炎症反応や程度の違い、現在リハビリテーション現場で用いられている数種治療法の効果の比較、薬剤とリハビリテーション治療法を併用することの効率性について検討していく。これらの実験結果より、どのような治療方法が最も効果を示すのか、またいつからどの位の期間治療を実施するのが最適かなどを学会発表や研究論文投稿を通して臨床現場に提案していく。 本研究では実験全般において実験動物の飼育、分子生物学的実験の環境や技術指導などに大阪医科大学病理学講座による指導協力を受けることが可能であり、この協力指導をもとに実験を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)平成29・30年度は、実験精度を高めるべく実験手順の見直しや分子生物学的解析技術や使用薬剤・機器の詳細を再確認しながら、実際に実験動物を使用した本実験への開始準備を進めた。そのため平成29・30年度の直接経費からの物品購入など支出は少額にとどまり、大部分が次年度への使用額に加算された。 (使用計画)平成31年度より、実験環境の整備状況を確認しながら、実験動物(ラット)を使用して廃用性筋萎縮を作成、摘出筋の遺伝子およびタンパク質分析、治療介入実験の準備を始める。これらに関連する解析機器や実験動物用治療機器の購入、関連する周辺備品・試薬・消耗品の購入が予定されている。また、平成31年度には国際学会での本研究成果の一部を発表予定である。
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