研究実績の概要 |
1.これまでの研究で、嚥下前後に吸息を行う頻度が高い患者群では増悪を起こしやすいことが明らかになった(Nagami S, Oku Y, et al. BMJ Open Resp Res, 2017)。そこで、これらの患者の追跡調査を行い、予後、嚥下‐呼吸パターンと肺機能低下との関連性の検討を行った。追跡調査が可能であった46名のうち、14名が死亡・頻回増悪・通院不能/在宅移行など予後不良であり、予後不良患者では、嚥下前後に吸息を行う頻度が有意に高かった。また、呼吸と嚥下の協調性を再評価できた25名においては、嚥下前後に吸息を行う頻度の減少傾向を認めた。以上の結果より、呼吸と嚥下の協調性は増悪関連因子であるだけでなく、予後予測因子である可能性が示唆された。以上の結果を、第59回日本呼吸器学会学術講演会およびAmerican Thoracic Society 2019 International Conferenceにおいて報告した。
2.嚥下反射が起きてから次の吸息が始まるまでの時間は、吸息から呼息への切り替わり付近で嚥下が起こった時に最大となり、呼息から吸息への切り替わり直前で最小となる(Paydarfar et al. J Physiol, 1995)。従って、タイミング的に言えば、吸息から呼息への切り替わり直後の嚥下は比較的に安全な嚥下であり、呼息から吸息への切り替わり直前の嚥下は最も誤嚥を起こしやすい嚥下と言える。また、嚥下効率の観点からは、声門下圧が陽圧に保たれていることが嚥下効率にとって重要であり、実際、ほとんどの嚥下反射は機能的残気量よりある程度高い肺気量位で起こっている。したがって、吸息から呼息への切り替わり直後のタイミングを音と光で訓練対象者に知らせて、呼吸と嚥下の協調性と嚥下効率の最適化を図るトレーニングシステムの開発を行った。
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