研究課題/領域番号 |
17K01492
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
氷見 直之 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70412161)
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研究分担者 |
宮本 修 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00253287)
岡部 直彦 川崎医科大学, 医学部, 助教 (30614276)
丸山 恵美 川崎医科大学, 医学部, 助教 (30792072)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リハビリテーション / 脳梗塞 / 電気生理 |
研究実績の概要 |
研究課題である脳梗塞後のリハビリテーションにより機能が回復するメカニズムと考えられる神経活動の変化を解析する上で、新規導入したA/D変換器(Digidata1550、Molecular Devices社)により安定かつ高速な電気生理学実験システムが構築できた。しかし既存の顕微鏡に不調が生じ、修理およびメンテナンスに3カ月弱の時間を費やしている。 また計測システムは構築されたがその一方で安定した海馬スライス標本が得られなかった。海馬のニューロンは虚血に弱いため、過去に脳幹スライスを作成していた時のスライス作成条件が全く適用できず、スライス作成段階で細胞死を生じていた。そこで摘出からスライス作成に到るまで全ての手順を見直した。現在最適な手法として、①Sucroseベースの冷却等張バッファーを麻酔後のラットの心臓より灌流し、脳組織を充分に冷却し、低Na+環境とする。②灌流後迅速に脳組織を摘出し、氷冷Sucroseバッファー中にて5分置く。その際、O2/CO2=95/5%の混合ガスをバブリングしておく。③スライサーで切片を切り出す際にも混合ガスをバブリングした氷冷sucroseバッファー中で行い、切片はバブリングした30℃の通常人工脳脊髄液(ACSF)へ移し、1時間休ませてから記録を行う。④記録チャンバーの液は混合ガスをバブリングさせたACSFを、32℃、2ml/minで灌流させる。 以上の方法により、海馬CA1領域の細胞の状態が良好に保持され、記録可能となった。さらにCA3領域の線維束を電気刺激し、CA1ニューロンの応答(シナプス後電流、EPSC)を解析する方針だが、刺激に対応する応答もデータ取得が可能となった。29年度は充分なn数を取得できなかったが、以上のように測定系が確立し、当初の到達目標は概ね達成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
29年度は測定システムを完成させ、脳梗塞モデル(マイクロスフェア塞栓モデルを使用)ラットの海馬で健常群に比べて活動特性が低下していることを示す計画であった。測定システムの構築は予定通り順調に達成できた。しかしながら、安定したスライス標本作製法の確立に予定以上の時間を費やしたこと、および主要機器の一つである顕微鏡に不調が発生したため修理に3カ月ほどが必要となり、その間の測定が不可能になったことにより計画に少々遅れが生じた。 しかしながら状態の良いスライス標本を安定して作成できる条件が決定し、実際に海馬CA1領域のニューロンの活動(自発活動および電位-電流曲線)が記録でき、またCA3-CA1線維束の電気刺激によりCA1ニューロンに生じるシナプス後電流(EPSC)も精度よく記録できていることから、計画より少々遅れてはいるものの、大きな問題ではない。
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今後の研究の推進方策 |
29年度内に把握することを予定していた脳梗塞モデルラットの海馬におけるニューロンの活動特性やニューロン間の伝達効率の変化を明確化することを優先的に行う。このような変化が確認された場合、さらにリハビリテーションとして脳梗塞後に低強度全身運動を負荷し、同様に海馬において伝達特性の変化を解析する。一方、脳梗塞による海馬のニューロンの活動特性や伝達効率の変化が確認されない場合、刺激と記録の条件を変更して検討を続ける。初期設定の刺激および記録条件で機能低下を反映できていない可能性があるためである。まずこの条件検討を実施した後、それでも変化が見られない場合、梗塞モデルをやや重篤なものとし(脳塞栓を生じるマイクロスフェアの注入量を増加させる)、同様の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の残額が生じた理由として、顕微鏡修理のためラット脳スライスを用いた実験が行えない期間が発生し(約3カ月)、この期間は実験動物の搬入を控えたためである。平成29年度に使用できなかった予定頭数は、平成30年度の予定頭数に組み込んで研究を継続する。
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