研究課題/領域番号 |
17K01492
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
氷見 直之 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70412161)
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研究分担者 |
宮本 修 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00253287)
岡部 直彦 川崎医科大学, 医学部, 助教 (30614276)
丸山 恵美 川崎医科大学, 医学部, 助教 (30792072)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リハビリテーション / 脳梗塞 / 電気生理 |
研究実績の概要 |
研究課題である脳梗塞後のリハビリテーションにより機能が回復するメカニズムと考えられる神経活動の変化を記録中。 計測システムは構築され、海馬スライス標本を用いてシナプス伝達効率の電気生理的記録に着手した。スライス標本のCA3領域にタングステン双極電極を置き、CA1領域の錐体細胞にパッチクランプを行い活動を記録したが、刺激に応じた後シナプス電流(EPSP)が得られず、電極の設置位置、刺激条件および灌流液組成などを見直した。今回用いた海馬スライスは冠状断であるため、同一スライス内でCA3からCA1への連絡(Schaffer側枝)が分断されていると考え、できる限り記録領域に近い部位でCA3の放線層を刺激したところ、EPSCが記録可能となった。また、記録細胞に自発性活動電位が生じてEPSCの波形に重なることがあり、EPSCのamplitudeを解析する上で障害となった。これは、パッチ電極内液に細胞内からNaチャンネルをブロックするアンタゴニストであるQX314を添加することにより解決した。以上の策により鮮明なEPSCが得られたが、梗塞脳と健常脳で差異が見られなかったため、梗塞を生じるマイクロスフェアの個数を増加して少しシビアな梗塞脳を作成し、再度記録中である。 一方で、組織学的にシナプス機能の変化を捉えるため、シナプス前(synaptophysin)および後(PSD95、MAP2)部位の免疫染色を行った。梗塞脳では健常脳に比べてPSD95の発現が低下していることが確認された。一方でsynaptophysin発現量には双方に差はなかった。 2018年度はEPSCの大きさを比較するにとどまったが、2019年度には充分なn数を取得し、さらに可塑的な差異についても比較する方針で、概ね到達目標は達成していると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は測定システムを完成させ、脳梗塞モデル(マイクロスフェア塞栓モデルを使用)ラットの海馬で健常群に比べて活動特性が低下していることを示す計画であった。測定システムおよび安定したスライス標本作製法は確立したが、最初に確認したい電気生理学的特性である海馬CA3からCA1へのシナプスにおけるEPSCの振幅変化の記録に予定以上の時間を費やした。これは刺激位置がCA1から遠く、CA3からの線維がスライス内で分断されたいたためと考え、刺激位置をCA1に近い側に変更することにより解決した。しかしながらEPSC振幅に梗塞群と健常群で差がみられなかった。さらにEPSCにCA1細胞の自発活動電位が重なってしまい解析が難航した。これについても、記録電極内にNaチャンネル阻害剤であるQX314を加えることにより活動電位の発生が抑えられ解決した。これらの問題解決のため計画に少々遅れが生じた。 しかしながらシナプス後電流(EPSC)が精度よく記録できていることから、梗塞モデルを少々シビアなものとして比較する段階に入り、計画より少々遅れてはいるものの、大きな問題ではない。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度内に把握することを予定していた脳梗塞モデルラットの海馬におけるEPSCの振幅変化およびその可塑性の減少を示す記録を得ることを優先的に行う。このような変化が確認された場合、さらにリハビリテーションとして脳梗塞後に低強度全身運動を負荷し、同様に海馬において伝達特性の変化を解析する。一方、梗塞モデルをやや重篤なも のとし(脳塞栓を生じるマイクロスフェアの注入量を増加させる)、同様の検討を行う。 また組織学的にもシナプスの変化を捉えるため、2018年度に引き続きシナプス関連分子(synaptophysin、PSD95およびMAP2)の組織免疫染色およびウエスタンブロット定量を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度の残額が生じた理由として、主に消耗品の納入額が予算額より割引され差異が生じたことによる。予算との差異は11,273円なので、概ね計画通りに使用できていると考えている。次年度も引き続き計画に基づいて研究を継続する。
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